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□『明日』に繋ぐ手
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オンボロで壊れかけのロボットを、あいつらは友達と言った。
ちょっといじって直してやっただけで、沈んでいた顔を明るくして。
「すまねぇな、サッズ」
何度でも直してやるさ
お前らが笑ってくれるならな
「なんだ、また壊れちまったのか」
小さな村の、小さな一角で、
もう何度目かわからない挨拶を飛ばした。
声をかけた相手は、それに応えることもなくただそこにいた。
もう何度目になるかわからない、ヲルバ郷
いつ来ても、静かで寂しい土地だった。
今、この小さな郷にいるのは、いやに古いロボットだけで、他には誰も、何もいない。
この家の主となったオンボロは、俺が来る頃にはいつもどこかしらガタがきていた。
その度に修理してやっているのに、次に来る頃にはまた別の場所が壊れている。
前回は脚、その前はプロジェクター
今回は起動こそしているものの、低く唸ったまま動かなくなっていた。
「もっと上等な部品探して来るしかないかねぇ」
動けずにいるオンボロを覗き込みながらひとりごちる。
今までは、グラン=パルスにある遺跡じみた部品で騙し騙し直してきた
だが、劣化の激しいそれらではどうにも長持ちしなかった。
もっと高性能な、最先端の技術で造られたものがある場所は知っていた
そこの部品を使えば、きっとそう簡単に壊れなくなるだろうということも。
知っていたが、そこに探しに行こうとはしなかった
コクーン。
あれから、まだ一度も戻っていない。
いつも、遠巻きにして見つめるだけで
そりゃあ、すぐにでもあいつらを探しに行きたいと思った、でも
『見つけて…どうなるってんだ』
見つけたところで、目覚めさせる方法もわかっていないのに
そうやってごまかして、目を背けた。
見たくなかった。
何もできなかった自分と、
物言わぬクリスタルとなった二人の姿を。
見たくなかった
温もりも感じない、そんな世界にいる二人を。
元気で、笑っていてくれればと思う
今でも。
今でも、心のどこかで二人が元気でいる姿を期待していて
頭のどこかで、二人がクリスタルになったと認めようとしない自分がいて
だから、この郷には足しげく通った。
こうやってこの郷にくれば、ひょっこり顔を出しそうな気がして
ここに来て、壊れかけのロボットしかいないことを確認しては、
二人がいない現実を目の当たりにして落胆した。
誰もいないこの郷で、このオンボロの修理だけは縋るように続けた。
ここでこいつを直しながら、二人の帰りを待ち続けている。
ロボット一台には広すぎる、家と郷
ここで待ち続けて、壊れて
このロボットに、自分の姿を重ねていた。