BC
□呼び続ける、あなたを
1ページ/5ページ
「姉さんが…死ん…だ…?」
突然かかってきた電話の意味が、私には全くわからなかった。
受話器からは、男の人の声が低く静かに続いている。
でも、だって、
つい数日前、私を助けてくれたばかりなのに……?
『イリーナさがってて』
『あらゆる手段で任務を成功させる。それがタークスです』
あの時、私より小さいはずの背中が、なぜかとても大きく見えた
あの、姉さんが……?
放心していたのか、気が付くと電話はすでに切れていて
震える手で受話器を置く。
ただ、何も理解できない。
私は今、何を聞いた?
私は今、何を言われた?
姉さん…
姉さんが……?
ふらふらと自分の部屋に戻り、力なくドアを閉める。
見慣れているはずの部屋が、なんだかとても広く見える。
以前はいつもそこに存在を感じていたのに、なぜか今はこんなにも空っぽで
姉さん…
姉さん……?
姉さんが………
死ん──…
恐怖が身を走った
そんなはずない
混乱した頭が叫んだ。
そんなこと、あるはずない…!
涙が、堰を切ったように溢れた。
姉さん…姉さん……!
嘘でしょう……?
頭を抱え込んで、大声で叫びそうになる。
信じない、信じたくない。
だって、いつもそこにいて、
いつも、その存在が追い越せなくて煩わしくて
やっと
やっと向き合おうと思ったのに?
ただ、何も理解できずに
ただ、何も認めたくない。
いつも壁のように立ちはだかって
いつも目の前をちらついて
いつもそこにいてくれたのに
その姿が、もう見れない?
姉さん……
姉さん─……!
その時、机の上に置かれた携帯が目に入った。
混乱したままの頭に、何かが繋がる。
そうだ…
姉さんに電話して、直接聞けばいいんだ……
それは、今のこの状態を唯一変えてくれそうな気がして
その本人が出られないことなど考えもしない。
飛び付くようにそれを手に取り
短縮三番
普段滅多にかけることのないそのダイヤルを押した。
プルルルル
かかった…!
聞き慣れたコールが流れる。
プルルルル
お願い、出て…!
プルルルル
プルルルル
姉さん…!!
プルルルル
プルルルル
プルルルル……
聞き飽きたコールが流れる。