BC

□アタラシイセカイ
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堪らず、そこを離れた



手は、空のまま






外に出る


風が冷たい




今まで過ごしてきた、どの季節とも違う風が






あぁそうか


あんなに、大きな人さえ




あんなに大きな存在さえ、飲み込んでしまうのか





寒い


ひどく寒い





あの人のいないこのセカイを、俺は知らない


ずっと、あの人の下でやってきたから




あの人さえ、このセカイは飲み込んでしまうのか






あいつらと会う前の風の色は、もう思い出せない



主任がいないこの街の風を、俺は知らない




この風の中で、この波の中で


このセカイで、生きていくのか






いつもと同じはずだった、


だが、確かに違うこのセカイで




生きていくのか






それを、決めたのは俺自身で





いつもと同じだ


言い聞かせる




いつもと同じように、忘れるだけだ





小さな波も


大きな波も




関係ない


全て忘れて、流されて




生きていくのだ



進むしかないのだ





いつか、自分も飲み込まれる、その日まで




言い聞かせる



何度も、何度も





この、知らない風の中を進んでいくしかないのだと








end


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