BC
□アタラシイセカイ
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「ツォンさん、嘘って言ってくれよ、と……」
大切だったモノを奪ったのは
仲間の銃声と、緑の閃光だった
真冬の空に
吹きすさぶ、乾いた風
そんな街の、そんな一角で
俺はまだ生きてる
「それ、片付けるんだろ、と」
ルードとツォンさんと
二人が話しているところに言葉で割り込んだ。
がらんどうのオフィスの中で
誰にも必要とされないその群れに目を向けたまま。
ルードに指示していたツォンさんの声が止まって、恐らく二人は俺を見ている
「……あぁ。本来なら事務課の者に頼むんだが、タークスの本部は極秘だからな」
仕方ない、と言いたげな溜息とともにツォンさんは言った。
それ─…
限られたスペースに、増え過ぎたデスク
持ち主がいなくなったそれらは、今はただ邪魔なだけだった。
以前なら、そんなもの気にするまでもなく、人員が補充されるまで放置していた。
だが今回はそうもいかない。
俺とルードと、ツォンさんと
三人しかいないオフィスには多過ぎる机。
処分するのは、とても当たり前で
「俺がやるぞ、と」
そう言って立ち上がり、デスクをひとつ持ち上げる。
いつもなら、ルードに任せてフケる力仕事
今回は自分がやりたいと思った。
自分の手で、消してしまいたいと思った。
「なら、ひとつ残しておいてくれ」
出口に向かう背中へかけられた注文に
言葉の意味を計りかねて足を止め振り返る
「新しい志願者がいる。その分だ」
あぁ、とだけ答えまた前を向き歩き出した。
「どんなやつだか聞かないのか」
「……別に」
聞きたくもない
今は
いや、この先も。
二人の視線を無視したままオフィスを出た。