Shorters

□届く距離
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「三年もサボってたんだ。リハビリにはちょうどいい仕事だろ、と」


キセキ的に目覚めた、数ヶ月後の



不満そうな、心配そうな声を、からかうように諌める。





久々の任務のくせして、一丁前にイキがって





自分がどれだけ脆い存在なのかもわからないで








そんな姿を、



自分を、




ワラってみる









この三年で思い知った




弱くなった自分



甘い考え







いなくならないような気がしていたんだ




こいつらだけは




今度の仲間だけは、きっと大丈夫なんだと






そんなはずはなかったのに






眠り続けていたこいつを見て、気付かされた





そんなはずがない



特別なんてあるはずがない






こいつも、他の後輩達も全員




例外なんてない




無事で在りつづける保証なんてどこにもないんだと。







脆くて、いつ消えるかわからないやつらだから





助けてやらなきゃならない





「一緒に行くか?」




この手が届くうちは



この手が届くうちに





「いえ、結構です」




いつだって、やつらはこの手をすり抜けていくから






守ってやらなきゃならない




ここに在る限りは







何もかも、変わらないはずはないから







「二手に別れるぞ、あとでここで合流だ」




「はっ」








その声も



言葉も





この距離さえ、変わらないはずがないから








守らなければ





消えてしまわないように



消えてしまわないうちに






少しでも、長くそこにいてほしいと願うなら









失いたくない


こいつを、この仲間達を




放したくない




そう思っている自分に気付く







みっともなく、


小さな流れのひとつにしがみついて







弱くなった


本当に弱くなったと




ただ実感するばかりで。










離れていく、背中と




この意思に反して、変わりゆく、距離と風。









その声も、交わした言葉も




記憶も、その存在も







すべて夢のように不確かなものなんだと気付く








気付いたけれど











消えないように



消さないように






消されないように







消させはしないと








ここに在る限りは






この手を延ばし続けようと







この流れに逆らってやろうと、決めた。








to be countinue...




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