Shorters

□依存の
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ピッ ピピッ ピッ





まただ


また勝手に指が動く。





出るはずのないあなたの番号を



届くことのないあなたのアドレスを



いつの間にか電話帳から呼び出す。





落ち着かないとき、ちょっと時間が空いたとき



ふと気付けば繰り返している。




手元にあるからいけないのだとわかっているが、任務があるため手放せない。





だから携帯って嫌なのよね……




そう思いながら、決定ボタンを押したがる手を止めた。


待受画面まで戻してから、ポケットにしまい込む。




これもまた、いつもの繰り返し。








助けられなかった彼を、



救えなかった彼を想う。






会社側に彼の死を報告してから、もうどれくらい経っただろうか。



この目で確かめたはずなのに、未だ受け入れられずにいるらしい。







ツォンは、エアリスに言わないのかな…




その結果、どれだけ彼女が悲しむことになっても、

どれだけ神羅を恨むことになっても




そうしなければ、彼女は前に進めないというのに。






この疑問は彼女のためか、それとも自分のためか






彼女は、まだあの場所で待っているのだろうか。




帰るはずのない、彼のことを信じて。








そう考えている間も、気が付けばまた携帯を開いている。




また初期画面に戻して、ポケットにしまう。






今になって、彼にこんなにも依存していたことにはじめて気付く。




これは、恋心からか友情からか








肩に手が乗る。



振り返ると、黒髪の相方が立っていた。




「大丈夫?」




眼鏡で隠れたその顔には、憂いを帯びた苦い笑みが浮かんでいる。





「大丈夫よ」



なるべく明るく、笑って答える。






その笑みも、彼によく似た哀しい色をしていただろうか。









end


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