侍7よろず話

□幼き日々の記憶《前編》
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幼き日々の記憶 《前編》1


話は‥‥世界を揺るがしたあの大戦より10年ほど遡る。
まだ‥‥アキンドたちではなく、サムライを中心に世界がまわっていた時代。
中枢部では何かどろりとしたものがだんだん形となり‥‥力をつけ‥‥集まって巣を作りつつあったのだが、表向きは誰の目にもサムライの世としか映っていなかった。

そしてここ‥‥。
のちに修羅の戦場となる世界の中央の国々からみたらかなり遠方の‥‥とある国が今回の話の舞台である。
勝手に遠つ国と称されるその国では、神々しいまでの金髪を持ち容色も見目麗しい人々が比較的平和に暮らしていた。
外交政治の中枢から遠い土地柄のおかげか‥‥密かに進む陰謀や策略に無縁でいられたことが、その国の民の性質を穏やかで‥‥そう‥‥その髪色の如く陽だまりのような優しいものに育んでいったのだろう。

もちろん国の形態を成しているので、国主がいて治政を行なうために行政を司る長がそれぞれの地域を治めている。
だが他の国と趣が違うのは、国民のほとんどが国主や領主を尊敬しており、またそれぞれの長たちも民を国の宝として大事にしていたので、支配する者と支配される者という間柄ではあるにしても、地域共同体のように親密な関係を保っていた。

この国では身分の違いや職業の違いで、他の国のように大きく差別されることはほとんどない。
もちろん目上の者‥‥治政者に対しては敬意を払うものの‥‥基本的にはサムライも農民もアキンドも皆同等の扱いであった。

この時代としては大変珍しい‥‥桃源郷‥‥とでも言うべき国であった。
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