侍7よろず話

□美しきもの
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美しきもの 2


「伸ばしている‥‥という訳でもないようですね。かなり‥‥ざんばらって感じですが‥‥。」

ヘイハチがそう言うとキュウゾウが思わぬことを言い出した。

「‥‥以前は長かったことがある。」
「え?本当ですか?」
「ほう!それはいつ頃のことでやんすか?」

シチロージの問いにキュウゾウは一瞬遠くのほうを見る目をした。

「10年前‥‥か。大戦のあと‥‥しばらくは長かったと思う。」
「ほほう!髪の長いキュウゾウ殿‥‥ですか‥‥。」

シチロージ、ヘイハチ、カツシロウのそれぞれの脳内には、さまざまなロン毛のキュウゾウ像が浮かび上がっていた。

「そ‥その‥‥キュウゾウ殿はどのくらい髪が長かったので??」

思わずカツシロウが堰を切ったように聞いた。キュウゾウはジロリとカツシロウを見ると一言。

「‥‥腰ほど。」
「え‥‥えーーー!!!」
「腰とは‥‥相当長かったのですね!!」

再び勝手に想像している3人。

《見てみたい‥‥。》

誰もがそう思ったであろう。

「しかしキュウゾウ殿‥‥失礼だがお前さんの髪はかなりクセのあるというか‥‥そのまま伸ばしてはかなり膨らんだ髪になりますな。すごく手入れ大変でしょう?」

同じ金髪として少しライバル心のあるらしいシチロージが聞いた。

「いや‥‥矯正していた故‥‥直毛だった。」
「ぐはっ!!」

《その細く引き締まった腰に‥‥あの金色に輝く髪がさらさらと揺れていたというのか!!》

色白で真っ直ぐな金髪の美人なキュウゾウを想像して‥‥皆脳内で悶えている。

「‥‥?」

彼らがどんな妄想をしているのか‥‥てんでわからないキュウゾウは、その様子を異な物を見るような目で不思議そうに見つめている。

「で‥では‥‥どうしてそんなバッサリと切ってしまったのです?そんなにきれいで長かったんならもったいないじゃないですか!」

己の妄想から少し立ち直ったらしいヘイハチが尋ねた。
他の二人も頷いている。
何処かの剣豪と剣を交えた時に刃先をよけきれずに切られてしまったのか‥‥それとも‥‥?

「そのようなこと‥‥気になるのか?」

遠い異国の血を一番感じさせるその淡い髪色を、キュウゾウは一番忌み嫌っていた。
それで辛い思いもしたことがあったのだろう。

《この髪を‥‥きれいと言ってくれたのは‥‥この者たちと‥‥奴だけだったな。》
そのことが何気に嬉しかったらしい。

「‥‥不測の事態だった。」

昔を懐かしむような表情をして、キュウゾウは髪の毛を切った理由をポツリポツリと語りだした。
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