カンナ村療養シリーズ

□戦のあとで
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戦のあとで 2


7人のサムライ。

各々がよくぞ生きていたなと思われるほど、体中に重い傷を負っていた。
そしてその中でも命を落としたと思われていた4人。
ゴロベエ・ヘイハチ・キクチヨ・キュウゾウ‥‥。
彼らはどのようにして蘇ったのか。

まずはゴロベエだが‥‥。
緒戦で敵の弾丸によって命を散らしたかのように見えたが‥‥

「ご冗談を‥‥。」

と呟きカツシロウの腕の中で力尽きていくゴロベエ。

その後のカンベエのすばやい動きが見事であった。
まずゴロベエを村はずれの無人の家に運び込むと、なにやら懐から妙な丸薬を口に含ませた。
大戦中に開発された一種の気付け薬らしい。
そして軍にいたころに身に付けた自己流の緊急手当てをゴロベエに施すと、カンベエは蛍屋に隠密裏に使いをやり、シチロージが5年間眠りについていたという冬眠装置‥‥つまり生命維持装置を密かに運ばせてその中にゴロベエを安置した。

そうしてカツシロウたちには村人にゴロベエの死を知らせるよう伝え、村からも敵からも見えるように見晴らしの良いところに墓を掘らせた。

そうして死したサムライを弔うための特別な儀式とやらを行なうという名目で、村人やカツシロウたちを遠ざけて、ゴロベエを墓に埋葬したフリをした。

そう‥‥策略。

サムライ7人のうち‥‥実際戦力が一人欠けてしまったわけだが、リスクを逆手にとって、野伏せりやアキンドたちを油断させるため‥‥。
また‥‥万が一敗れることがあった時に、大怪我をしたゴロベエの身を守るため‥‥誤った情報を流した。

カンベエの策略であった。

敵を欺くには味方から。
実際ゴロベエの生存を知らされていたのは蛍屋に直接連絡を取ったシチロージのみ。
だが、大戦を経験しているヘイハチとキュウゾウは、例の丸薬を含ませた時点でカンベエの計略に気がついていたらしい。
棺桶と紹介されたものが生命維持装置だということにもとっくに気がついていた。

こうやって戦が終わるまでゴロベエは凍結されていた。

まったく知らなかったのは村人と大戦未経験のキクチヨとカツシロウ。
悲しみにくれるカツシロウの姿に心揺らがないでもなかったが、根っからのサムライであるカンベエはあえてそれに目を瞑った。

戦が終わり、凍結が解かれて、正規の医者に緊急手術を受けたゴロベエが生前とほぼ変わらぬ姿で現れた時には、カツシロウが他の村人同様、驚きのあまり腰を抜かしたことはいうまでもない。
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