三途の川シリーズ

□川越え
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川越え 1


貴い犠牲を払った後にようやく平和は訪れて‥‥カンナ村にも長閑で平穏な日々が戻った。

カンナ村はぎりぎり都の直撃を受けずに済んだことにより壊滅的な被災は免れていた。そう‥‥最終的には農民が勝ったのだ。

彼らのために立ち上がった7人の侍。
この小さな村が生き残れたのも、あの侍たちのおかげだと村人たちは口々に話した。
しかしその侍の半数以上がこの戦いで命を落とした。
村人たちは都の残骸から、命を落とした侍たちの遺体や遺品を何とか回収して、村のはずれの見晴らしのよいところに4つの土饅頭を作って侍塚とした。

おそらくこれらは、以後このカンナ村の守り神として、彼らの残した業績とともに代々語り継がれていくことだろう。そしていつしかそれは伝説となって諸国に流布していくに違いない。


さて‥今回の‥このお話はそのような先の話のことではない。
戦が終わったあと、生き残った侍たちも全身に傷を負っていた。
その傷を癒すために‥‥厳しい冬の間、このカンナ村で侍たちは養生せざるを得なかった。

やがて春の訪れの気配を感じる季節になり、まず一番若いカツシロウが旅立った。
いろいろあったが‥‥この戦で侍としても人間としても大きく成長した彼は、最初の師と崇めたカンベエの刀を抱いて、村を去っていった。

そして田植えの季節となり、残ったカンベエとシチロージもカンナ村を発った。

話はカンナ村を出てから数日経ってのこと‥‥。
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