dream■short_T
□嫉妬でshit!
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名無しさんを酔わせて本音を聞き出す会。
これは、いつまで経っても決着の着きそうにないマルコとイゾウの争いを見兼ねたサッチが企画した飲み会である。
上陸の夜、隊長たちから飲めよ飲めよと勧められ、気を良くした名無しさんは思惑通りいい感じに酒が回っていた。
「いやー本日は兄貴たちにこんなにご馳走になりまして!
申し訳ないっ!!」
誰よりもオッサン臭い酔い方をしながら、名無しさんは豪快に笑って囲んでいる男どもを見渡した。
…と、イゾウと目が合うと、急にハッとしたように笑いを収め、目を細めて溜め息をついた。
「…でもさ。私…。
イゾウだけは、…。
どうしてもお兄ちゃんだとは思えないんだよね。」
いきなり勝負アリか!?
とどよめくギャラリーと、ピクリと紅を差した唇を微かに吊り上げるイゾウ。
「へェ、そうかい…、
名無しさんにとって俺ァ他の野郎どもとは違う、って訳だな?」
「うん。
イゾウは…
憧れのお姉ちゃんって感じなんだ。
ほんと綺麗で男とは思えないよねー、羨ましいぞこの!」
ブフーッ!!
と酒を噴き出して、イライラした表情のマルコが一変し肩を震わせた。
「マルコてめェ…!!
これで決まった訳じゃねェからな、調子に乗るんじゃねェぞ…」
「クックック…!
姉ちゃんたぁ傑作だよい。
酒が無くなっちまったから取ってくるよい。」
愉快そうに肩を揺らしながら、カウンターへ向かうマルコ。
と、戻る途中でフェロモン丸出しの女に誘いの声をかけられている。
面倒そうに一蹴して着席したマルコを見ると、再びヘラヘラしていた名無しさんは真剣な表情で低く呟いた。
「マルコが飲み屋でおねーちゃん達にモテモテだとさ…、
すごく嫉妬しちゃう自分がいるんだよね…。」
一発逆転サヨナラか?!
とざわめくギャラリーと、緩む口元を隠し切れない表情のマルコ。
「…そうかよい。
まァ安心しな。俺は名無しさん以外の…」
「何でいつもマルコばっかりなの?!ずるい!!
私もムサい男どもじゃなくてたまには綺麗なおねーちゃん侍らせたーーーい!!」
ぎゃあぎゃあと綺麗どころと酒を要求する悪酔い名無しさんに、さすがの隊長たちも呆れてぽつぽつと席を離れ出す。
「あーあ。もうこりゃ手に負えねぇな。
タチの悪いオッサンにしか見えねぇよ。」
サッチはやれやれ、と肩を竦めると、企画倒れだぜと溜め息をついた。
「煩ェよい。お前みてぇなフランスパン頭に名無しさんの可愛さが分かってたまるかよい。」
「蜂の巣にすンぞ。」
「えぇっ?!
二人して俺に八つ当たりかよ?!」