dream■mid_Dofla_modern parody

□プレゼントは王道で?
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「は?!

何これ、『本日全講義休講』?!」


10月23日木曜日。


朝から大学へ行くと、掲示版の前には人だかり、そして前代未聞の張り紙。


「名無しさん!おはよっ。

台風でもないのに、こんなことってあり得ないわよね、何なのかしら…」


「あ、ナミ、おはよー。

ほんとだよね。1講義だけならともかく、全部って…」


二人で首を捻りながらも、まぁラッキーだよね、カフェでも行こっかと話しながら裏門を出る。




「わ、凄い車停まってるー!

あんなのアンタの彼氏くらいかと…

って、あれ?」


金目のものを嗅ぎ付ける能力で、人待ち顔に停車している高級車を見つけたナミは、口を半開きにして私のほうを見返した。

なにごとかと視線を向けてみる。


…ん?!



「よぉ、名無しさん。

乗れよ。」


「…………は?!

ドフラミンゴさん?!


何、どういうこと?!」


驚愕したことに、そこには左ハンドルの運転席の窓から手を上げ、得意のスマイルを浮かべた金髪サングラス男。


「フッフッフッ。

たまにゃこんなこともあろうかと思ってな。」


「いや、これ予測できたとかあり得ないから。

ていうか、まだ何も説明してないのにわかってる時点でおかしいから。

絶対何かしたでしょ?!」


暫く空々しく恍ける様子を見せたが、解明されるまで乗り込まなさそうな私に痺れを切らしたのか白状する。


「俺じゃねぇぞ?

手回ししたのはヴェルゴだ。」


態とらしく肩を竦め、しかし口角は上がったままである。


話を掻い摘むと、「ドフィが
誕生日に名無しさんとまる1日過ごせるよう図らった」らしい。

何という私的濫用悪徳組織だろう。


「またあの親馬鹿か…!!

てか権力を無駄に使うな!!」


頭を掻き毟るも、どこまでも機嫌のよいドフラミンゴさんは窓枠から乗り出し、

「名無しさん、可愛いところもあるじゃねぇか。

昨夜は0時きっかりにバースデーメッセージとはなァ。」


「ああ、それはナミに…厶グッ?!」


電話で叩き起こされ、寝ぼけながらメール文を作成させられたという説明は、後ろから伸びてきた掌により阻害された。


「そぉーなんですよー、この娘ったら今まで乙女らしさの欠片もなかったのに…、よっぽどドフラミンゴさんのこと好きみたいで、いつも惚気聞かされててー!」


悪口こそあれ、微塵も惚気など聞かせた覚えはないが、その返答は親友の有無を言わせない視線により殺された。


「フッフッフッ…!

おいおい名無しさん、気持ちはわかるが仕方無ぇ奴だな、ほどほどにしとけよ?

銭ゲ…嬢ちゃん、またバラ撒きモンだが要るか?」


「きゃーっ!

話題の秋の新色ネイル!

ありがとーございまぁーす!!」


浮気疑惑騒動のときに突き返したが、誤解だったとわかると以前と同様の収賄関係に戻っている親友と恋人。


私は頬を引き攣らせながら、最も親しい腹黒人間2名のやり取りを見守っていた。



「じゃあ今日はごゆっくりぃー、素敵な誕生日を!

ラブラブに過ごしてねぇー!」


調子のよい文言を発してヒラヒラと手を振るナミに見送られ、私はドフラミンゴさんとその高級車に颯爽と連れ去られたのだった。





「…あの、今日は学校終わってからの約束だったんで、その、

プレゼント…今持ってきてないんですが。」


何処に向かっているのかわからないまま、助手席の私はおずおずと申し出た。

何だかこんなことを言うのは無粋だよなぁとは思うが致し方ない。


「あァ、それならちょうどいい。

行き先はお前の家だからな。」


「………は?!」


許可をした覚えはない、だがさも当然のような顔をしている。


「なんだ、散らかってて恥ずかしいとかそういうことか?」


「や、そういう訳じゃないんですけど…」


典型的な台詞を予測してニヤつかれるが、何というか戸惑いもあって然りだと思う。


「今、まだ午前中ですよね。

で…、うちに行って…、夜まで何するんです?

はっきり言って何も娯楽品なんかないですよ?」


「フッフッ、娯楽品なァ。

別にそんなものは期待しちゃいねぇけどな。」



高い鼻梁の横顔を見遣りながら、そういえばファミリー抜きで、インドアに二人だけで過ごしたことが一度も無いことに気づく。



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