dream■mid_Dofla_modern parody
□桃色背徳事変
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「ねぇこれなんてどう?
あ、でもこっちも捨て難いわねー…
とりあえず片っ端から着てみて名無しさん!」
「そんなに試着しなくてもいいって…」
私は押し付けられた複数の衣類にたじろぎ、ナミに苦笑してみせた。
「何言ってんの、そりゃあ選ぶ私も気合も入るわよ、漸く名無しさんが色気づいてきたってのに。
彼氏できたのに欠片もないんだもん、心配してたんだから!」
「…何だと?」
親友にかなり失礼なことを言われ、思わずヒクリと片頬を吊らせたが、反論できないと思い直し口を噤んだ。
ある日の夕刻。
一日の講義を終えた後、バイトも無い日だったので私はナミに服の見立てをして欲しいと頼んだ。
それはドフラミンゴさんと会うのに、少しくらい女らしい服も着てみようかな…などという自分史上有り得ない乙女な思考からきたものであり。
一般的には、大学生にもなろう女子が今まで関心を持たなかったほうがどうかしているといったところだろうが。
「うん、やっぱコレが一番似合う、決定ね!」
「…ちょっと短か過ぎない?」
普段ジーンズ中心にパンツスタイルばかりの私は、スースーする太もも辺りを擦りながら懸念顔をした。
「名無しさん…、その歳でミニを躊躇うって…
ホントアンタって今どきの若い女子から逸脱してるんだから!」
「……何だと?」
度重なる親友の無礼に再度引き攣り顔をしたものの、ご尤もな意見なのだろうと思い直す。
それに、目の前の鏡に映る自分は、衣装効果とはいえ―
ウエストのベルトがリボン状の薄い水色デニム生地のシャツワンピースは、私を普段とは明らかに違う雰囲気に仕立てあげていた。
「ナミ、ありがとね。」
店を出た帰り道、薄暗くなりかけた街を歩きながら私はナミにお礼を言った。
「水臭いわねー、これしきのこといつだって引き受けるわよ!
…クレープ食べたいな。」
「要求早いなオイ!」
流石の台詞に笑いながら、クレープ屋が充実している区域に足を向ける。
「すごー、あんな車、滅多に…」
遠目から見えてきた黒塗りの高級車に、ナミが反応を示した。
私も視線を上げ、ほんとだ…と言い掛けたそのとき。
「名無しさん!
やっぱりたこ焼きがいいな、私!」
「は?
別にいいけど…」
「美味しいたこ焼き屋があるの!
んで、その店はこっちじゃなくてあっちなの!」
「ちょ、ちょっと、痛いって…」
急に反対方向に引っ張られよろけた拍子に、サンダルが片方脱げてしまったので振り返って拾い上げる。
履きなおしをして立ち上がったとき、ちょうどさきほどの高級車が目の前を通り過ぎた―
「……!!」
長い艶めく車体の後部座席。
そこには、見慣れたピンクの派手な男が、両脇にしなだれかかるセクシー全開な女の肩を抱いて悪そうな笑みを浮かべていた―
「名無しさん…」
呆然と立ち尽くしていた私に、ナミが遠慮がちに声を掛けた。
「………ごめんナミ、奢るのは今度でいいかな。」
「うん、…」
曇った表情で何かを言いかけ、しかしあまりにも歴然と見せつけられた現実に慰めの言葉が見つからなかったのだろう。
そのままただ手を引いてくれたナミの優しさを受け止めながら、私は傷付いた重い心を引き摺って帰路に着いた。
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