dream■mid_Dofla_modern parody
□Mr.and Ms.campus…!?
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「冗談じゃないです。
絶対嫌です無理です。」
「君が儲け話で『無理』という言葉を発するとはね…、
入部以来初めてじゃないかい?」
「それは儲け話の範疇ではありません!」
私は部長の机にダンッと両手を付き、ギロリと睨み上げた。
本日は、サークルの集会日。
女子は親友のナミと私だけが所属する、経済サークルというドマイナーな集合体である。
女より学問や金儲けオタクばかりの変人男たちが、今日はやたらと熱い視線を向けてきていた。
何か企んでいるとは薄々感じていた―のだが。
普段は無愛想極まりない部長がやたらとにこやかに持ちだしたのは、あろうことか大学の一大イベント、ミスコンに出場しろとの話だった。
私が通っている大学のミスコンは全国的にも有名で、歴代の優勝者は才色兼備ということで、アナウンサーなどになる人も少なくない。
賞金は出ないのでどこが儲け話だと思うところだが、毎年ミス・キャンパスが所属するサークルは入部希望者が殺到するのだ。
うちの部は、部費の一定パーセントが毎月選出される節約王に還元されるシステム。
当然分母が多ければその分還元率も上がる、それはそうに違い無いのだが。
「私、そういう無駄に目立つことキライなんです。
ていうかナミが居るじゃないですか!
美人だし私と違って派手好きだし、これ以上の適任はいないでしょ?」
逃れる為というのもあるが、本当にナミなら優勝できると踏んで提案する。
その言葉にフッと片口角を引き上げた部長は、得意気に腕を組んでギシッと椅子の背面に仰け反った。
「彼女なら大会実行委員として既に潜入させてある。
それに、自分よりも君のほうがふさわしいと意気込んでいたよ。
うーん、美しい友情だねぇ。」
「いや、どう考えても利潤目的だし…!」
間髪入れず突っ込みを入れた私。
それから部内の男どもに取り囲まれるようにして、口々に迫られたが頑として首を縦には振らなかった。
恨みがましい逆恨みの目を掻い潜ってサークル棟を出ると、ちょうど大会実行委員会から戻ってきたというナミに遭遇した。
「あっ、名無しさん!
ねぇ今日、ミスコンの話聞いてきたでしょ?」
開口一番の話題にうんざりとし、同時にムスッと不機嫌顔を晒す私。
「あのねぇナミ、親友だからわかってるでしょ?
私は…」
「うんうんそうよねぇ、名無しさんは目立つことキライだもんね。
わかるわよ、私もつい、自慢の名無しさんが晴れ舞台に立ってくれたらって欲を出しちゃったけど…、
こういうことは強制するものじゃないしね!」
爽やかに笑まれ、私は目を丸くしてナミを見詰めた。
「………ゴリ押ししてくるかと思ったのに。」
「やーだ、そこまで欲深くないわよ失礼しちゃう!」
バシッと背中を叩かれ、漸くほっと安堵した私は、ドフラミンゴさんが迎えに来ている裏門へ足を向けた。
それはサークルの集会がある日には必ず申し出られる習慣となっていた。
大丈夫だというのに、男性率が高いことに警戒心を抱いているらしい。
以前のトラウマから、それなら絶対に地味な車で来るようにとの条件で了承した。
まぁ当然このド派手男の地味という感覚は一般からはかけ離れており、高級車には変わりが無い訳だが。
そして本日はというと、ぴかぴか光るシルバーのポルシェが見えてきた。
色みを抑えれば良いと思っているらしいが、勿論目立っている。
「こんにちはぁードフラミンゴさん!
今日も名無しさんを、男たちの魔の手からバッチリガードしましたよ!」
何故か…いや目的はわかりきっているのだが、ナミは毎度ドフラミンゴさんにこのような挨拶をしていく。
魔の手など存在せず、虚偽も良いところなのだが突っ込むのも面倒で黙っている。
「フッフッフッ、銭ゲ…嬢チャンにゃ感謝してるぜ。
名無しさんほどの女に妙な虫がつかねぇ筈がねぇからなァ。」
既に最大限に奇妙な虫がついてしまっていると思うのだが。
…アンタだよ、アンタ。
「組織の女どもにもバラ撒いてるやつだが、要るか?」
あらゆる事業に恐らくウラで関わっている悪徳オーナーは、一般人が予約待ちするような商品在庫を多数所持していた。
いつもナミにそういったものを渡す訳だが、どうやら私の男避け役への賄賂という肚らしい。
「きゃーーーっ!!!ウソ!?これ……!
今すっごい話題のグロス!!店頭でもネットでも完売で、女子垂涎のコスメなのよー!!」
大興奮しているナミと、餌付け成功とばかりにほくそ笑んでいるドフラミンゴさんの様子を生温い視線で見守る私。
それぞれが自分の利益目的で表面上の笑顔が取り交わされる中、じゃあまた明日ね、と脱力した声で助手席に乗り込む。
「…あ、名無しさん!
じゃあほんとミスコンのことは部長に私からも、断り入れとくからね!」
発進間際に思い出したように声を掛けられ、余計なことまで耳に入れなくていいのに…!とドフラミンゴさんの様子を伺った。
「アァ?
ミスコンだァ?」
あぁもう、ほら!
この耳聡い男が反応しない訳が無いのだ。
私が内心舌打ちをせんばかりになっていると、ナミが馬鹿正直に説明を始めた。
「…という訳なんですよー。
名無しさん、利用されそうになってて…。」
「男の風上にも置けねぇな。」
到底古風な日本男子には見えぬ男が、そう言って眉を顰める。
「でも安心してください、私が庇いますから!
…それに何より、」
困ったように眉をハの字にし、私に労るような視線を向けるナミ。
「名無しさん自身が出たくないって言うから、尊重してあげないと。
『私みたいに地味で不器量で華の無い女が選ばれる訳無い、最下位に決まってる』なんて言うんです。」
おいおいちょっと待て、誰がそこまで…
「…………
何だと?」
その言葉を聞いた途端、ピクリとこめかみが痙攣したドフラミンゴさんが一変、低い声を出した。
「勿論、私はもし出たら優勝すると思ってますけどね!
名無しさんって自分の美貌に自覚無いからぁ…」
仕様が無い娘、とばかりに苦笑する態とらしさ、しかしドフラミンゴさんは気付いていないようだ。
…親友よ、厭な予感しかしないのは気のせいですか。
「名無しさんが、自分に自信が無ぇだと…?
ミスコン女王ごときに選ばれず、剰え最下位と思うだと…?
…………フッフッフッフッフッフッフッ。」
明らかに可笑しさからではない笑いで肩を震わせている。
「名無しさん、
お前は俺の女としての自覚が足りねぇようだな。
…嬢チャン、気が変わった。
エントリーの手配をしておいてくれ。」
「…………はぁああああああ??!!」
私は只でさえだだっ広い助手席のシートで仰け反り、そしてドフラミンゴさんの襟首に掴みかからんばかりに押し迫った。
「ちょっ、
何勝手なこと言ってるんですか?!やめてくださいよ!
訳のわからないプライド心出すな!!」
「そうですかぁ?
…じゃあ、名無しさんがその気になったんなら…」
「あァ、頼んだぜ。」
「いつその気になった…?!
人の話を聞けぇえええ!!」
どう考えても戦略的な親友の悪巧み、それにまんまと嵌る頭脳は随一の筈の男。
私のこととなると、何でいつもこう馬鹿になってしまうんだ?!
あらゆる反論が怒涛のように押し寄せる中、達成感満載の笑顔で手を降るナミに見送られ、ポルシェは颯爽と走りだした。
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