dream■mid_Dofla_modern parody
□桃色学園騒動
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「すみません、明日の土曜日は駄目です。
サークルの集まりあるんで。」
「………サークルだァ?」
最早定番となった、金曜日の夜のお誘い。
カラオケ店(偽)のカウンターで、片肘をつき大きな猫背で此方に傾いできたオーナーは、眉の無い眉間にメキッと溝を作った。
「私だって普通の大学生ですから、サークルくらい入ってます。」
「何のサークルだ。」
「経済研究会です。」
「……そういやァお前は経済学部だったな。
だがサークル活動ってなァ一体何だ。」
「そうですね、ガチの日本経済から日常生活の節約方法に至るまで、あらゆる情報を交換するんです。
経済新聞ディベートの後、最安スーパー情報とか。
レシートでエビデンス提出して、その月最低の生活費に抑えられた者には、クーポン券各種が贈られるんです。」
淡々と説明されるその内容に、理解不能といった表情が浮かぶ。
「…そんな変人の巣窟に居て何が楽しい。」
「楽しいとかじゃなくて、生活の為です。
極貧学生の必死さがわかりますか?わからないでしょう。」
「………。」
金持ちは口出しする権利は無い、という勢いで屹と鋭い視線を向ける。
そのとき、不機嫌極まりないオーラを放ち始めたドフラミンゴさんの前に、ベラミーが咳払いをしながら顔を出した。
「あー、…名無しさん、でもあれだよな、日曜は空いてんだよな?」
横目で私を見ながらそう言い、何かを必死に訴えている。
「え?あぁ…、うん。
日曜は特に何も無いけど。」
明らかに胸を撫で下ろした表情の忠犬は、主人をチラと確認すると安堵の表情を浮かべその場を立ち去った。
「……チッ、仕方無ぇな。
じゃあ日曜だ。」
私が何しに出てきたんだこいつ、と空気を読めないことを考えている間に、ドフラミンゴさんは渋々譲歩の意を呈した。
「………で、お前が今月の節約王、そのクーポン券とやらを。」
「はい、獲得しました!!」
ですから今日は私の奢りで遠慮無くどうぞ、と、得意気にその戦利品を広げる。
目の前には様々な種類のバーガー。
約束の日曜日、待ち合わせ場所の希望を電話で訊かれたので、某大手ハンバーガーチェーン店にした。
当然のことながら、カジュアルなその店舗の中でドフラミンゴさんの存在感は異彩を放っている。
「……思ったよりゃァ悪くねぇが、どれも味は同じじゃねぇか…。」
「えぇ?!
何言ってんですか、これにはチーズ入ってるしこっちはテリヤキソースでマヨネーズかかってるし、全然違いますよ!」
力説しながら、それを初めて食するというセレブリティにどんどんと試食させていく。
途中であからさまにうんざりし始めたのを見て取った私がポテトを薦めると、此方は意外と気に入ったのかサクサク食べ進めている。
「だが何だ…、お前のサークルは大学生の女なんぞが所属するにゃ、聞くからに華が無ぇな。」
「ええ、なので女子は二人だけです。」
「……何だと?」
ポテトを摘む指をピタリと停止させ、口をへの字に引き結んだ。
「因みにもう一人は私と同じ苦学生で、頭が凄く良くて美人だけど、私以上に金に汚い女です。」
「………。」
ドフラミンゴさんには言わないが、実は親友のナミと私は、大学一の銭ゲバ美女ユニットなどという不名誉だか名誉だかわからない渾名が付けられていた。
「さてと。デザートにシェイクとアップルパイでもいかがです?」
粗方を食べ終え、何だか機嫌を損ねていることは薄ぼんやりと感じたが敢えて突っ込まず、私は最後のクーポンをひらひらと振ってみせた。
「要らねぇ…」
心底げんなりして顔を顰めるドフラミンゴさんに肩を竦めて見せると、私は自分の分だけを替えるべくカウンターへと向かった。
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