dream■mid_Croco_trip
□secret birthday
1ページ/2ページ
「クロコダイル、おかえり!
そして誕生日おめでとう!!」
「………。」
クロコダイルの誕生日、9月5日の夜。
その日には来てほしいと事前にお願いしていた通り、出現したのを待ち構えて歓声を上げる。
残業もせず、ほぼ夕刻に近い時間に帰宅していた。
「…祝われて喜ぶような歳でもねェがな。」
予想通り、たいしたリアクションも見せないクロコダイルに構わず、私ははしゃいで続けた。
「さあさあ、準備して豪華ディナーに行くよ!
予約してるから急いで!」
グイグイと腕を引っ張る私を、クロコダイルはじっと見下ろして動かない。
「……何?」
「ちったァ学習能力がついたか。」
何のことかわからず首を傾げたが、口角を上げた顔とわしゃっと撫でてきた大きな掌で、やっと意図を汲めた。
クロコダイルは興味無いよね、と思うと自分の願望を抑える私が、そうしなかったことに対するそれなりの褒め言葉らしい。
ちょっと柄にもなく乙女らしい嬉しさが湧いて、笑みを返す。
「あっ、ちょっとストップストップ待って!!」
クロコダイルが着替えのために衣服を脱いだのを見て、私は割り込みに入った。
「あ?
何だ、別にてめェを今すぐどうこうしようって訳じゃねェぜ?」
半裸の状態でニヤリと艶笑され、まんまと耳を赤くしてしまったのが何とも悔しい。
「っ、だ、誰がそんな意味で…!
もう、違うの!
…これ。」
咳払いをし、体制を立て直すと、私は徐に滑らかな手触りのそれを差し出した。
「…ほう。
こいつァ仕立ても生地もかなりのものだな。」
目を細めて濃いワインレッドのシルクシャツを検分する姿に、安堵と喜びが込み上げる。
普段は殆ど黒、偶にブルーやグリーンがメインカラーのクロコダイル。
だけどきっと、この極上のワインのような上品な色も似合うと直感した。
「今日はこれを着て出るか。
合うスーツを選ぶ、待ってろ。」
ありがとう、という言葉がなくても、満足してくれたことがわかって、私もまた満足げにその姿を見守った。
.