dream■short_U
□モクモク・パラダイス
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「スモーカーさん!いい加減書類に承認印押してください!!
センゴク部長に怒られるのは私…ゥゲホッ!」
上司にあたる男が入り浸っている、白煙立ち込める共同喫煙所。
そこへいつものように押し入った私は、いつものようにその煙たさに咳き込み眉間に皺を寄せた。
「またテメェか名無しさん…
大人しく俺の戻るのを待ってろと言ってるだろうが。」
そんな私に睨みつけるような視線を向けた彼は、舌打ちをしながら宣う。
「はぁ!?私だってこんな身体に悪いとこ好きで来てんじゃないし!
肺癌になったら労災で訴えますからね!」
日常茶飯事の逆ギレに対し、私は声を張り上げて負けじと睨みを利かせた。
煩そうに渋々と二本の葉巻を躙り消したスモーカーさん。
そのとき、奥のほうからフンと馬鹿にしたような失笑と、クックッと笑う声が聞こえて来た。
―おぉ、いつもながら壮観!
そこには、若くして渋好みの私の密かな日々の潤いである有名人たちが居た。
私が務めている半国営機関のビルには、日本有数の企業が揃っている。
バロック・ワークスという古典風雅な一流企業の社長で、呼称もそれに相応しいサー・クロコダイル。
スモーカーさんを入れた常連三名はいずれも190超えだが、その中でも最も高身長だ。
艶のある黒髪をオールバックに撫で付け、葉巻を含め何もかも最高級らしき隙の無い出で立ち。
大きく横断した傷のせいで―いやそれでなくとも凶悪とすら言って良い顔だちは「カタギじゃないだろ絶対」と突っ込みたくはなるが、非常に精悍に整っている。
そしてもう一人は、海産業で日本トップの赤髪グループ副社長、ベン・ベックマンさん。
波打つシルバーグレイの髪を見るに結構な年齢なのかもしれないが、スーツ姿でもわかる鍛え上げられた筋肉質な身体。
三白眼に眉の無い厳ついクールな面相は、咥え煙草で流し目でもくれられようものなら腰砕けものである。
嗤われているにも関わらずつい惚れぼれと魅入っていると、スモーカーさんに首根っこを掴まれて強制退出させられた。
「オイ名無しさん。」
オフィスに戻るエレベーター内、書類に目を通しながらスモーカーさんは不意に低く問うてきた。
「テメェ、何でいつもわざわざ喫煙所にまで押しかけて来やがる。」
ジロリと見下ろされ、ギクリと肩を震わせた私は…
→スモーカーおち p.2
→クロコダイルおち p.3
→ベックマンおち p.4
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