dream■short_U

□不敵でヘタレな幼馴染V
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「…次はもう庇いきれないと言っただろう。

何故、他学年の転校生なんかと殴り合いになったんだ、ドフィ?」


「チッ、煩ぇな…。

その呼び方やめろっつってんだろ。」



放課後の職員室、生徒面談用に区切られた一画にて。


長い脚を片膝に載せ、苛々と貧乏揺すりをするふてぶてしい態度のドフラミンゴに、教員ヴェルゴはやや俯いて溜息を吐いた。


ドフラミンゴが、一学年下の転校生、トラファルガー・ローと大決闘を繰り広げたとの衝撃ニュースが学内に広まった小一時間後。

現場の校庭裏に駆け付けたヴェルゴが到着すると、まるで凶悪犯のように数人の教師から羽交い絞めにされているドフラミンゴと、被害者扱いのようにちやほやと怪我を心配されているローの姿。


悪たれた生徒指導に慣れたヴェルゴには、少なくともどちらかが一方的にというようには見えなかったが、そう判断されても仕方が無いかとも思う。

最近この学校に転校してきたトラファルガー・ローは、頭脳の高さが鳴り物入りで、校長をはじめ教師たちの期待の星であった。


一方でドフラミンゴは普段の素行は最悪、狡猾さから実際行った悪事からすると露呈しているそれは氷山の一角ではあったが、それでももう退学すれすれの状態だった。

さすがにローのほうにも多少のお咎めはあったようだが、そのような背景と、学年が下であったこともあり、責はほぼ100%ドフラミンゴに向けられていた。



一連の出来事を思い返しながら、顔を起こししなにサングラスをクイッと引き上げようとした途端、異変に気づく。


「…おかしいな。

サングラスの手応えが無いぞ。」


「………テメェがこういうときは互いに目を見てなんざ言いやがって、勝手に取ったんだろうが。」


突っ込みもしたくねぇといった顔をし、ローとの殴り合いで壊れたらしき同じトレードマークの無い、色素の薄い鋭い目を向けた。


「…そうだった。此処にあったな。」


ヴェルゴは自らの左手のすぐ横にあるそれに頷くと、徐ろに再びかけ直して居住まいを正した。




「アイツ、名無しさんに手ぇ出そうとしやがった…!」


「…何だと?」


不意にまた怒りが込み上げてきたのか、低く吐き出して拳で机を叩くドフラミンゴに、ヴェルゴは眉根を寄せた。

もしそれが真実であれば、ドフラミンゴの行為は正当防衛である上、ローを女生徒に対し危険のある生徒として事情聴取しなければならない。


詳細を訪ねようと口を開く前に、またも獣が威嚇するような声が続けられた。


「あの野郎、俺の目の前で名無しさんに『俺の女になれ』なんざ言いやがった…、

許せねぇ…!」


「………、

何だと?」


ヴェルゴは今度は一拍遅れて、さきほどとは違った意味あいで同じ台詞を発した。



手を出した、というのは、世間一般でいう告白、のようなもののことか…?



これまで女癖に関する悪評も知れ渡っていたドフラミンゴの言い草とは思えぬそれに、さすがの長年の準保護者も閉口した。


「………それが理由で殴ったのならドフィ、お前が悪いぞ。」


―これほどまでに名無しさんのこととなると見境が無くなるのか。


何とも言えない気分になりながらゆっくりと窘める。



「あァ?

殴りかかったのァほぼ同時だ。


…だがンなこたァどうでもいい。

あの野郎、絶対ぇ名無しさんにゃ金輪際近づけねぇぞ…!」


歯を剥いて凶悪な睨貌をしたその目つきに、数年ぶりに直に目に出来たものがこれかとまた溜息を吐いた。






「おつるばあちゃん、どうしよう!

ドフラミンゴが…!」


「あァ、ヴェルゴから電話で聞いてるよ。

全く仕様の無い…。」



血相を変えて居間に飛び込んできた名無しさんに頷くと、つるは炬燵でみかんの皮を剥きながら溜息を吐いた。


「…って、何か呑気だね…」

やきもきしている様子も無く、ただうんざりしたような顔をしているつるに、思わず勢いを停止した。


「あの馬鹿のこんな騒ぎはもう何度目だい?

いちいち驚いてちゃァ身が保たないよ。」


流石というのか、気丈なその態度に一瞬釣られかけたが、ふるふると頭を振ると膝を進めてにじり寄る。


「前、ヴェルゴ先生が、次は庇いきれないから退学かもって言ってたんだよ…。

…そう、なっちゃうのかな?」


「さァ、どうだろうねぇ。」


尚も調子を変えず、今度は器用に実の細い白い筋を取り始める様子にガクッと首を垂れる名無しさん。



「まァやっちまったもんは仕様が無いとしてさ。

お前を巡って一体どんなやり取りがあったんだい?」


自棄になったように同じく籠に盛られたみかんに手を出した名無しさんは、それを剥きながら経緯を話した。




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