dream■mid_Dofla_modern parody

□桃色背徳事変
3ページ/5ページ





「何回誘っても駄目で諦めかけてたからさぁ…

まさかミス・キャンパスから電話来て飲めるなんて、マジテンション上がるぜ!」


「…そっか、それはヨカッタ。」


学校が終わった後、私は連絡した学内の男子と或るバーの個室に居た。

大学生などが来るにはあまりにも高級そうなその店、どうやら金持ちの息子らしい。


初対面のときから何の前触れもなく突然誘ってきたこの男。

際立ったイケメンだが見るからにチャラく、何処から入手してきたのか連絡までしてきたが無視し続けていた。


けれど今私が用があるのはそんな男。

遊び人の感覚というものをどうしても知りたくて、こんな不本意な場に居る。



「ねぇ、あなたって確か学校によく一緒にいる女の子居るよね?

あの人は彼女じゃないの?」


この男を聞き出し役に選んだのは、その為だった。

可愛らしくはあるが意外なほど清楚なその子は遊びには見えず、固定の相手ではないかと思ったのだ。



「ん?

あーアレね、そうそうカノジョってやつ。

なに妬いてくれてんの?嬉しいなー。

心配しないで、名無しさんチャンのほうが断然キレイって思ってるから!」


勘違いな発言に不快感が込み上げるが、我慢してスルーするに留まった。


「…じゃあ、他の女と遊んだりしたら…、

浮気になるんじゃないの?」


最も知りたかった確信に迫る問いに、相手は一瞬ポカンとした表情をしたがさも可笑しそうに笑った。


「それって他の女とヤるって意味?

あはは、そんなの彼女居る居ないが関係あんの?」


「…!」


なるほど、これが遊び人の感覚か。

罪悪感すら無い可能性がある―そういうことか。



「まぁそりゃ見つかったらちょっと面倒だけどさ。

バレなきゃ無かったも同然だし。


てか、俺相当モテるけど、カルい女ばっかじゃ飽きてくんだよな。

だから純情そうな女もたまには食いたくなる訳。

美味くても、毎日高カロリー食じゃ飽きるじゃん?」


巧いこと言ったつもりか知らないが、軽蔑の念が沸くのを抑えるのに必死だ。



「てか名無しさんチャンも男いるよね?

…公衆の面前でチューしたしねぇ、あれは沸いたよね。」


ミス・キャンパスコンテストの一幕は最早知れ渡っており、それを指摘されること自体にはもう慣れきっていた。


「ミスター・キャンパス。

あれ、ドンキホーテ・ドフラミンゴさんだよね?」


「…!!」


しかし次の言葉にはビクリと反応を示した私に、ニヤリと口角を上げた。


「いやぁ俺実は、一流企業の社長子息でさ。

財界の有名人は殆ど知ってるんだ。…まぁウラ世界中心だけど?


あの人の女関係っつったらまた伝説レベルだもんなー。

噂では大物芸能人とか、日本でも有数のホステスまで骨抜きって話だぜ?」


「………。」


今更意外でも何でもない、その筈なのに、目の前がブラックアウトしていくような感覚に陥る。


「いち大学生が、何号目かわかんないけど愛人にしてもらえるなんて、名無しさんチャンラッキーだねー。」


そんなんじゃない…!

否定したいのに、ただのろのろと顔を上げてその男に薄ぼんやりとした視線を向けた。



「…んで、その名無しさんチャンを喰える俺も名誉に与れる訳だ。」


「……え?」


急に声色が変わり、瞠目すると学生とは思えない下卑た笑いを浮かべている。


「まさかこんなトコまでノコノコ来ておいて、ナニもされないなんて思ってないよねぇ?」


「…っ、やめて…!」


肩をグッと抱かれて思わず身体を強ばらせる。


「ドフラミンゴさんに…!」


「うちの親父、彼と同格の取引してんの。手下じゃないんだぜ?

…それに、多数いる女のひとりが他の男とどうにかなったくらいで、いちいち騒ぐかよ。」


最後の言葉で思考が停止してしまった私は、迫ってくる男の顔を絶望的に見遣った


―そのとき。



「アテが外れて残念だったなァ、腐れ小僧が。」


衝撃的な破壊音と悲鳴。

個室の扉を蹴破って現れたのは、派手な身なりにサングラスの異常なオーラを発した大男―



「誰と誰が同格だって?あァ?

テメェの親父ってなァどいつだ、名乗ってみろ。」


男は呆然として口を利けない様子だったが再度脅され、どもりながら慌てて口にすると、ドフラミンゴさんは馬鹿にしたような表情をした。


「あァ、あの小狡く立ちまわって小金稼いでやがる小悪党か。

俺にしてみりゃァ三下以下じゃねぇか、笑わせる。」


虚勢を張ったプライドが地に落とされた訳だが、それよりも恐怖のほうが先に立ち冷や汗をかいている。



「それから確かに俺は自分の女どもの品行なんざァどうでもいい。

そういうヤツらが存在した頃はな。」


態と威圧的に見下ろしながら言葉を続ける。


「だが今は違う。

…もしコイツに手ぇなんざ出した野郎にゃ、二度と日の目を見られねぇようにしてやる。」


私のほうを指し示し、サングラスの奥の目を眇めると狂気的な笑みを浮かべた。



「フッフッフッ…小悪党の息子くらいじゃ知らねぇだろうなァ…

日本国憲法を掻い潜ってヒトを消す方法なんてなァ、いくらでもあるんだぜ…?」


「ヒィッ…!!」


恐怖が限界に達したのか、椅子から滑り落ちてガタガタと震えている。

ドフラミンゴさんはそれを鼻で嗤うと、たかが学生の小僧だ、このくらいにしておいてやると言い捨てて私の腕を掴んだ。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ