☆ARS☆
□もう一度君に
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俺には好きな人が居る。
今、俺の目の前で机に向かってひたすら日記を綴る彼女。
この人。
でも、叶わない。
例え叶ったとしても決して喜ばしいものではない。
だから、このまま。
翔「椎梛ー」
椎梛「ちょっと待って…もう少しで書き終わるから」
翔「えーっ?俺より日記ぃー?」
椎梛「だって…日記書いとかないと…」
その瞬間、シャーペンで日記帳を擦る音が鳴り止む。
冗談のつもりで言ったのに本気に捉えてしまった。
翔「だから俺が「私は気持ちだけで十分だから」
翔「…迷惑なんかじゃない」
何度も聞いてきたから、言葉にしなくても分かる。
こんな事言ったって返ってくる言葉は分かり切ってるのにな。
椎梛「前の出来事を読むのも楽しいし」
翔「うん…そうだよな…分かってる。変な事言ってごめん…」
椎梛「ううん、私が悪いの。だから翔君は謝らなくていい」
翔「違う!椎梛の所為じゃない!俺が悪いんだ…」
そう。
全部俺が悪いんだ。
君は悪くない。
翔「俺が椎梛を…」
俺が君を変えてしまった。
君の人生を…変えてしまった。
翔「──椎梛を記憶障害にしたんだよ」