☆ARS☆

□First Present
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椎梛「そろそろ始める?」

雅「お酒!」

椎梛「…はいはい」


椎梛から受け取った安っちぃ発泡酒のプルタブを開けて一気に飲み干す。


「もうちょい…うーん…何て言うのかなぁ…男らしさ?とか?何かないの?」と言う椎梛は無視。

「男通り越してオヤジだよ」ってのは少しギクリとしたけど、やっぱり無視。


流石に「そんなんだと一生彼女なんて出来ないよ?」には手が止まった。



雅「分かってますー」



男気なんて皆無だし?


「彼女が欲しい!」なんて言ってる割りに何の努力もしてないし?


そもそも出会いなんてないし?



典型的な口だけの人間。


そりゃ彼女なんて出来ないわ。


雅「もう1本!いや、1本なんてケチらずに3本くらい!ドーン!」

椎梛「飲み過ぎ」

雅「いーの!どうせ今日は泊まるし」

椎梛「えっ!?聞いてないよ!?」

雅「言ってないもん」

椎梛「大切な事は言ってよ!」

雅「聞かれなかったから言わなかった」


深ーい溜息が聞こえた。


4本目の発泡酒の缶に手を伸ばすと、椎梛にその手を掴まれた。


雅「離せー。飲ませろー。酔わせろー」

椎梛「ちょっと。もう十分飲んだし、酔ってるでしょ?」

雅「まだそんなに飲んでない!まだ酔ってない!」

椎梛「酔ってるって」


缶は俺の手から抜き取られて俺の手に届かない場所に置かれた。


雅「かーえーせー」

椎梛「雅紀ー?」

雅「…飲みたいのっ」

椎梛「ダメ」

雅「ケチー」

椎梛「二日酔いに苦しむの目に見えてるんだからさぁ」

雅「もうどーでもいーの!」

椎梛「荒れ過ぎ。何かあった?」

雅「………好きになった人がね?」

椎梛「うん」

雅「…レズだった」

椎梛「………は!?」

雅「今年は自分の見る目の無さに呆れた1年でしたー!あーあ!何なんだよもぉ!」

椎梛「マジで…?」


放心状態の椎梛の目を盗んで缶にもう片方の手を伸ばした。


けど、こっちも掴まれた。


雅「飲ーまーせーろー」

椎梛「だからって飲んでいいとはならない」

雅「椎梛の癖にぃー」


思いの外強い力で掴まれていてビクともしない。


左手に両手首を掴まれて動けない。


何でっ…俺、男だよ…?




椎梛は俺の両手首を掴んだまま立って俺の隣に座り直した。


かと思ったら、右手は俺の左頬に。



椎梛「それがそんなに辛かった?」

雅「違う」

椎梛「じゃあ何?何がそんなに悲しくてヤケ酒が酷いの?」

雅「分っかんなーい。兎に角飲みたい!」

椎梛「はぁ…」
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