☆ARS☆

□First Present
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雅「もう今年で何回目?」

椎梛「忘れたね」

雅「それくらい椎梛に祝ってもらってるって事だよね…」

椎梛「いーんじゃない?独りで祝うよりは」

雅「…椎梛って何でそんなに知らず知らずに人を傷付けるのが得意なの?」


しかも、無邪気な笑顔付きで。


ムカつくんだけど、何か怒るに怒れない。


怒り過ぎて怒るのに疲れただけかも知れないけど。


笑顔が可愛いからかも知れない。



椎梛「楽しくない?」



急に真面目なトーンで訊ねて来た。


椎梛「ねぇ、楽しくないの?楽しくないなら今年でもう止めるけど」

雅「別に…楽しいけど」

椎梛「じゃあ何で?」

雅「『何で』?」

椎梛「何でそんなに暗い顔してんの?」

雅「この日になると彼女が居ない事を実感するから?」


聞いてんのか聞いてないのか、ふーん…と興味なさそうに頷いて自分で作って来た唐揚げを1つ食べた。


椎梛「じゃあ私と付き合う?」






























雅「…は?」

椎梛「だーかーらー、私と付き合う?」

雅「それ………どの道二人で祝う事になるよね?」


本当に言いたかった事は隠した。


椎梛「そうなるね(笑)」

雅「じゃあ何でそんな事言うの?(笑)」

椎梛「可哀想だから?」


俺、そんなに哀れに思われてたのか…


一瞬本気で焦った俺がバカみたい。


雅「そんなに可哀想に見える?」

椎梛「嬉しそうには見えないね。いっつもヤケ酒するし」


…ごもっともです。


雅「だってやってらんないもん」

椎梛「だから『私と付き合うか?』って言ってんの」

雅「優しさ故の同情なら結構」

椎梛「ほーい」


また1つ唐揚げを食べた。



クリスマスイブだと言うのに、ここには大量の唐揚げとお酒しかない。


ツリーやリースなどの飾りもなければ、七面鳥やケーキなんかもない。


勿論、クリスマス特有の雰囲気もない。



虚しいクリスマスイブ。
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