☆ARS☆
□甘い誕生日
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潤「ありがとうございましたー」
それは、最後の1つを売り上げた直後の出来事だった。
「すみません」
潤「あ、本日は完売…」
「いえ、違うんです」
潤「では、ご用件は?」
「道に迷ってしまって」
ここは入り組んでいるから道を尋ねられる事はしょっちゅう。
この女性もそう。
「ここはどこですか?」
またアバウトな…
潤「行き先はどちらですか?」
「取り敢えず、大通りまで行ければ何とかなると思います」
潤「でしたらご案内します」
「とんでもありません!お店を空けてまで案内していただくなんて…」
潤「先程も申し上げました様に、本日は完売しましたから」
「……では、お言葉に甘えて」
俺は店を閉めて女性を大通りまで案内するのだった。
※※※※※
大通りまで歩いた。
店を始めたばかりの頃は俺自身何度か迷子になった事があるので、この近辺の地図は完全に入っているから道案内はお手の物。
「ありがとうございました。何かお礼をさせて下さい」
潤「いえ、お役に立てたなら僕はそれで十分です」
「あ、今度はケーキ買いに行きますね?」
潤「それは嬉しいですね」
それは外交辞令的な、意味を成さない唯の口約束だとばかり思っていた俺は真に受けなかった。
だから
潤「いらっしゃ……あ」
「来ちゃいました(笑)」
翌日、彼女が本当に店を訪れた時はマジで目ん玉飛び出るかと思った。