☆ARS☆
□君の虜
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〈椎梛side〉
別に手を繋がれるのが嫌なんじゃない。
寧ろ智君になら嬉しい。
でも、毎日そんな事をされてたら私の心臓が持たない。
だから繋がない。
『何で女の子ってそんなに手が冷たいの?』
智君が言ったこの言葉の真意は分からないけど“女の子”って言う表現がどうしても引っ掛かる。
私以外の“女の子”にもこうやって手を繋いでいるの?
こうやって優しさを振り撒いているの?
モヤモヤする。
智君は私の手を握ったまま相変わらず考え事をしているみたいで、一言も喋らない。
クラスでもこんな感じだから特に違和感はないけど。
何を考えてるのかなぁ?
私の事なら…素直に嬉しいな。
…私は何を考えてるの?
近頃、荒谷椎梛が智君の色に染まり始めてる事に私は薄々気付いている。
智「あっ…」
椎梛「どうしたの?」
智「ほら見て?」
椎梛「ん?……あ…」
智君が見上げた空をその視線を辿る様に私も見上げてみた。
すると、さっきキスされた所の傍に優しく冷たさが降ってきた。
智「睫毛に乗ってるよ」
椎梛「智君こそ頭に乗ってる」
智「ふふっ(笑)」
クリスマスまであと5日。