☆ARS☆

□君の虜
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〈智side〉



おいらの胸で泣く椎梛ちゃん。


それを宥めるのがおいらの役目。



まだあんな奴の事を目で追っているけど、少しずつおいらを見てくれている事においらは気付いている。


最初よりは大分距離は縮まったのかな、とは思う。


でも、まだ遠い。



あの日の帰り道、初めて掴んだ君の掌は冷たかった。


愛に冷えきっていた。


だから僕が暖めてあげるんだ、と決めた。


でも、暖めてあげられていない。



おいらは君に一体何が出来るのだろう。


何をしてあげられるのだろう。

何ならしてあげられるのだろう。


好きな女の子の為に何も出来ない自分に腹が立つ。

嫌気が差す。

憤りを感じる。



君と僕は似ているけど、全然似ていない。

近いけど、全然近くない。


…嬉しいけど、嬉しくない。





いつしか帰り道は君の隣で自分自身を責める時間。



寂しげに揺れる手を握ったら、あの日より冷たかった。


智「ねぇ、何で女の子ってそんなに手が冷たいの?」

椎梛「…私みたいに冷え症が多いんじゃないの?」

智「じゃあ毎日手ぇ繋いで帰ろっかな」


内心は新たに椎梛ちゃんの事を知れて凄く嬉しい。


椎梛「い、いいよ///」

智「どっちの“いいよ”?」

椎梛「繋がなくて結構です///」

智「あらぁ〜」


フラれちゃった(苦笑)
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