いつも君の側で

□交錯する思い
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沈んだ気持ちの整理をする間も、時間は待ってくれない

沈黙に包まれた中、ゼノム山を降りバスカー集落へ赴いた私達を村人達は暖かく迎えてくれた


封印の一つを守れなかったのに…


杖をついて、現れた酋長さんは出会った時と変わらぬ笑顔のままだ


「そんな顔をするな受け継ぎし者よ。そして巫女と戦士達もそう気を落とすでない
此処から封印が解かれるのを皆感じていた。だが、ソナタ達を無下に扱う者など居ない」


淡々と語る言葉から偽りの気配さえ無く、村人達も頷いている


「何故…ですか?」

「それは、ソナタ達が我らの希望だからだ。肩の荷が重いじゃろうがの…」


酋長は元気付けるように、更に言葉を並べた


「それに、まだ封印は二つある
セントセントールそして港町ティムニー。どちらか一つ守れれば良いのだ
セントセントールに行くなら亜人達が残したエルゥの祠を使いなさい。
今ではファルガイアの生命エネルギーの維持に欠かせないモノであるが、アレは転送装置でもある。南東の森にある筈じゃ」


そう言い切り、セシリアの肩に手を乗せた


「ゼファーの加護が在らんことを」

「………はいっ!」


励ましの言葉を胸にバスカー集落を後にしてエルゥの祠に向かった
南東に向かうにつれて枯れていく大地とは程遠く、青々と茂る草木が増えていき、水の流れる音がだんだん大きくなってくる


「相変わらず不思議な遺跡だな。まさか転送装置だとは知らなかったが」

「ザックさんは知ってたんですか?」


知っているような口振りにセシリアが疑問を口にする。
当たり前だと言うようにザックは鼻を鳴らした


「トレジャーハンターだからな。多少の遺跡には行ったことがある」

「その遺跡探しはオイラの記憶任せなのにね」

「得意分野がちげえだろ?」


同意を得るようにザックが振った言葉に「うん。そうだね」と頷いたロディ

そして、返答に固まるザック


「ロディ、其処で素直に同意しちゃダメ」

「え?ダメなの?」

「うんダメ。それはハンペンが言う言葉」


間違いを正す側でセシリアが暖かい眼差しで頷いた


「ロディさんって凄いですね」

「真面目な奴に肯定されると凄い威力だな…」

「ぇ、ええ!?ご、ごめん!!」


ロディのお陰で和やかなムードに成り変わった一行は、湿気で濡れた石の上を歩いて遺跡の奥に進む
通路の側を何処からか湧いた水が川のように流れていっていた

遥か昔には居たエルゥが残した遺跡
その中にある技術を真似する事は出来ない程高いもの

部屋の周りをくまなく探した結果
私達の前にある転送装置らしきモノは、手刷り階段を登った奥に立てれば良いだけのようだ


「他にない…ですからね」

「しかも三人分のスペースだな…」


ザックとセシリアの視線がロディと私に向けられて「ああ」とロディに納得された


「名無しさんおいで?」

「………………」


二人の前で好きな人に改めて背中に乗って?と薦められるのは色々体力が削られていく気がする
しかもおいで?ってにこやかに笑顔で言ってるし断りたくないし


「名無しさん?」

「何でもない」


動揺を隠すように普通を装って何時も通りの自分の行動をする
腕を首に回してセシリアとザックに見られないよう顔を隠した


「くくッ」

「どうしたんですか?ザックさん」

「いや、何でもねーよ」


転送装置の場所に上がると明るい光が包み込み、周りが見えなくなった

守護獣達の使うモノと似た感覚

光が無くなると違う床の模様が描かれていて此処が先程と違う場所だと告げていた


「セントセントール…今度こそ」


封印を守る

そう願いを込めて、彼の町へと足を進めた
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