居候する事になりました

□序章
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何が正義で何が悪か
そんなの、その場に立つ人が正義をいくら掲げても悪になる事だってある

だから考える

起こった事件をいくら解決しても帰ってこないものは帰ってこない。

事件を未然に防ぐ事が叶わなかったら恨まれるのは私達

どうすれば良かったのか
どうすれば助けられたのか
どうすれば正義で居られるか

堅く結んだ口に含んだ酒の香り
わいわい騒ぐ上司や部下の戯れを他所に思い更ける


泣きながら、待ってくれと懇願してきた彼に手錠を掛けたのは…私

どうしようも無かった

彼は死に逝く妻の為に盗みを働いて入院させようとした

けれど、もう。手遅れだった

看取れぬまま、手錠をかけられて牢獄に連れ込まれた彼は………


苦い味。
今の私には丁度いい

煽るように次から次へと飲み干した――


ガタン………ゴトン………ガタン………ゴトン………


揺れる列車。微睡みの中へ墜ちていく



――――――――――――――――――


本日最後の便がライモンシティに到着した

毎日のように同じことの繰り返し
昼夜問わずバトルサブウェイでトレーナーの相手をしながら列車の管理やお客様の為に安全運転を心がけ、安心という名の元に運営をさせて頂いております。


しかし、私の前に問題が浮上しています。


「お客様、終着駅です。起きて下さいまし」


触れられる距離まで来ると香る酒の匂い
そして、揺すって起こそうとしても全く起きる気配が無く
漆黒の長い髪が肩を揺する動きに少し遅れて動くだけ

たった一人、起きないお客様の為に軽く10分は作業を遅らせています。
この列車は今日、整備員に点検しなくてはならない列車ですから、早く降ろさなければなりません
仕方無く、彼女の膝と肩に腕を回して車両を降り、待っている整備員の方に謝礼して、ベンチに寝かせました
それでも起きる気配が全く無いとは…無用心と言いますか。鈍感と言いますか…困った人ですね。


「どうしたの、ノボリ」


白いコートを揺らしながら歩いてきた弟に視線を向けると、彼もベンチに寝ている彼女を見て事情が分かったようです。苦笑いを浮かべてますから


「起きないの?」

「えぇ、起きません。何か身分証明書等無いかと思い探したんですが…不自然です」


彼女が持っていた鞄の中には身分証明書らしき物があったものの、見知らぬ土地名。見知らぬ地図。見知らぬ切符などなど
分かることは職業が警察官らしいですが


「無いんですよ。更に大事な物が」

「うん。不思議だね。まさか仕事場に置いてきちゃった?」

「分かりません。しかも連絡先に繋げても応答が無いですし…このままという訳にもいきませんからね」

「無用心だねー」

「全くです」


彼等が側に居るなら安全にこのまま放置しても構わないでしょう
しかし、女の身一つで誰も居ない駅に放置するのは無理な話です


「ノボリ、この子家に泊めてあげたら?絶対風邪引く」

「クダリが構わないなら私も構いません」


何時より笑みを深く浮かべはにかんだクダリは、警察手帳の名前に目を通しました


「碧ちゃん、か。楽しみだな。早く起きないかな。何処から来たのか僕知りたい」

「えぇ、そうですね。私も少なからず興味がありますから」


自分の着ているコートに手を掛けると、同じことを思っていたのかクダリもコートを脱ごうとしていますね
思わず笑みが溢れました


ベンチで寝ている彼女の上に二枚のコートを掛けて、もしもの場合に備えてモンスターボールからシャンデラを出しました


「私達にはまだ仕事がありますから終わるまで彼女をお願いしますねシャンデラ」

「早く、終わらせて来るからお願い」


でらっしゃん!!

任せろと意気揚々に手を動かして、彼女の側をふよふよと浮いております

毎日のように繰り返していた日常に少しの変化が起こり始めたのは、深夜零時を回った今日で御座いました


誤字訂正13/07/28

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