いつも君の側で
□目覚めと出逢い
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そんな懐かしい思い出を思い出して私は小さく溜息を吐いた
アレからおよそ7年が経ち、旅という環境の中で様々な知識と技術を身に付けた
全てはゼペットさんの懐の深さと、ロディの優しさのお陰だと感謝している
だけどゼペットさんは旅の道中で静かに息を引き取り、今ではロディと私の二人旅だ
目的地は無い、ただ渡り鳥のように行く宛てのない荒野を行くのみだ
「何時かはあの村を出るつもりだった、ただ早まっただけだよロディ」
彼は私と同じ傷を負った
ARMを扱うだけで魔族の使いだと言われ村を追い出された
例え村人を守る為に振るった力であっても
「だけど僕は…」
「ゼペットさんはARMを造り出していた。ロディはゼペットさんを魔族の使いだなんて思ってる?」
落ち込んでいる意味は分かっている
だけど其れを引き摺っていては前に進めない
そうゼペットさんは私に教えてくれた
ロディは心が優しい
そう、とても優しい
だから誰よりも傷つきやすい
長い間の中で見て来た彼の長所であり短所だったりする
だから私がゼペットさんに代わって支えてあげる
私の問いにロディは勢いよく首を横に振った
「私もロディに賛成。だから気にしちゃダメARMを扱えるのは確かに限られた人達かもしれないけど、誤まった方向に使っている訳でも無いんだから」
小さい頃より少し離れてしまった身長差に腕を伸ばして補い頭を撫でる
青く柔らかい髪がわさわさと揺れる
「そう、だね」
小さく苦笑を洩らしたロディに私も笑みを浮かべた
「そうだよ、まだ行った事のない町や村があるんだから私達の他にARMを扱っている人も居るかもしれないよ?それに今向かっている場所はアーデルハイドっていう王国だし」
そう提案をしつつ撫でていた手を退けて懐に入れていたARMを取り出し
背後から襲いかかってきたモンスターに一発命中させるとロディも前方に居たモンスターを撃退させた
「全くモンスター共は空気が読めないよね」
「ははは」
ロディは乾いた笑いを浮かばせる
いやそれよりも彼女の成長の速さに尊敬し直したというべきか
「随分前は名無しさんの弾が明後日の方に飛んでいったのになぁ」
「それは仕方ないでしょ?だって…どう照準を合わせたらいいのか分からなかったし…咄嗟の打ち込みに慣れてなかったし…」
眉間に皺が寄る。ロディの言っている時期は5〜6年前の事だろう
ARMに初めて触れた時からゼペットさんに教わり、足手まといにならないように身につけようと頑張っていた時だ
「今じゃ殆ど百発百中だからさ、ほんと成長したな」
懐にARMを仕舞う私の頭にぽふっと暖かい手がのる
カァっと熱が顔に集中してピシリと体が一瞬硬直した
それがあまりにも不自然だったのかロディは「ん?」と視線を私に向けてきた
慌てて「何でもないよ!?」と首を振り、速足で前に進む
嬉しい、けど恥ずかしい
そして見られたくない
そんな気持ちの名前をゼペットさんに教わりたかった
どうやって対処したら良いのか私には分からない
先先に歩いて行く名無しさんの背中を見てロディは首を傾げ「悪い事しちゃったかな…」と呟くのだった