勿忘草-わすれなぐさ-
□そーいや睡眠3時間だわ!みたいな自慢話はどーでもいい
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「ーーじゃあ、私達はこれで」
「いやいやいやいやいやいやいやいや」
「いやいやうるさいアル」
「ちょ、なんでみんなでいなくなろうとしてるの?」
玄関で、なぜだか三人+一匹でいなくなろうとしてるのを引き止める。え、なにこれ新手のいじめ?
「久し振りに会ったんでしょう?今日くらい二人でゆっくりして下さい」
「いや、確かにそーだけど…」
「あ、一応言っておきますけど銀さんの為じゃありませんから。あくまで梨凛さんの為ですから」
「んなこたァ分かってんだよ‼‼」
「いつまでもグジグジうるさいアル。男なら腹括れヨ」
神楽の一言で、銀時はうっと言葉を詰まらせた。事実、どうして自分も三人を引き止めているのか分からない。
「じゃあ失礼します」
「間違っても梨凛さんに手、出さないで下さいよ」
「出さねェよ‼‼‼」
「もし発情したら一人で静かにヤれヨ。梨凛の身体に触るネ」
「しねェよ殺すぞ‼‼‼」
「じゃ!」
ガラガラ。戸は閉められ、途端に静かになった。重い溜め息を吐き、その場にしゃがみこんだ。
……き、気まずい…‼‼だってさっきカッコ付けたばっかだよ⁈⁈すげーカッコ付けたばっかなんだよ⁉⁉⁉それだけでなんか恥ずかしいのに、たまに想い人なんて言われちゃあ誰でも意識しちゃうだろ‼‼‼
一人悶々と悩んでいると、背後で音がした。
『…銀時?』
「⁉⁉お、おぅ、どーした…?」
ビクリと肩を震わせ、勢い良く後ろを振り返る。そこには壁伝いで歩いて来た梨凛が、不思議そうな、心配そうな表情をして立っていた。着る物が無かった為、俺の着流しを纏っているのだが。
…デカイ。
……リアル二次元シチュ…‼‼‼
思わずガン見してしまう。ガキが好きそうなギャルゲーで、よく見かけるシチュエーションだ。
まぁ?俺は大人だから?そんなん興味無いけどね?
だが、着流しから覗く包帯と傷が俺を現実へ引き戻させた。
「…病み上がりなんだから、大人しく寝とけよ」
歩み寄り、腕を貸して布団へ戻す。時々痛みに顔を歪める梨凛を見て、自然と拳を握り締めた。
『あはは、その…一人じゃ寝れなくて』
苦笑いする梨凛。
ーーそんな事、俺は最後に会った時から知っている。だけど、彼女はその時を覚えていない。
…何も。
何があったのかも。
「…梨凛」
『ん?』
そっと、頬に手を添えた。
冷たい。相変わらずの低体温だ。
『銀時の手、あったかい』
へにゃりと笑い、すり寄って来る。こう警戒心の無いところも相変わらずだった。
「…ったく、箱入り娘が」
『?いひゃっ!』
照れ隠しでギュッと抓り、額を叩いた。
『扱い酷くない⁉』
「バーカ、愛情表現だ。…オラ、寝んぞ」
不満を溢す梨凛から目を逸らし、畳の上に背を向けて横になった。
『…銀時、こっちおいでよ』
「ハァ⁈」
『えぇっ⁉⁉』
信じられない!という顔をして振り返ったのに、同じく信じられない!という顔をする梨凛に出くわした。マジかコイツ…俺をなんだと思ってんだ⁉⁉
「……お前、襲われたいの?俺を嘗めてるの?どっち?」
『寝たいの』
「おおっとォ⁉⁉選択肢ムシ⁉⁉」
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