FF6 短編2

□おかゆいところはございませんか?
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「あ、……!う、……はぁ、ん……」
 飛空艇の見回りがてら、船主のセッツァーが深夜に居室が並ぶ通路を通りすがったその時。くぐもった声を耳にしたような気がして、思わずセッツァーはその足をビタリと止めた。
「……あぁっ、〜っ……!やっ、……、……」
 聞き間違いではない。部屋の中から、女の嬌声がわずかに漏れ聞こえている。咄嗟に部屋の順番から、使用者を割り出す。
(な、な、な、なんだァ?!)
 セッツァーは目を剥いた。この部屋は、フィガロ王弟マッシュが使っているはずだった。
 どうして筋肉バカの僧侶の部屋から、女の、しかもあのセリスの、こんなあられもない声が、こんな時間に、聞こえてくるのだ。
 少ししんとした間があり、ぎしりとベッドの軋み音も聞こえた。セッツァーは思わず、ドアにさらに近づいた。
「……大丈夫か……?もう少し、…………」
「……ん、……平気……、……もっと、……」
(もっとだと?!何を?!)
 全てが聞こえたわけではないが、セリスの方からねだっているようだった。途端、またしても隠しきれない喘ぎ声が漏れ聞こえてくる。
「な、なんて奴等だ……俺の船で……!」
 セッツァーは思わず呟き、名状しがたい感情を抱きながら、しかし扉を叩くわけにもいかず、とにかくその場から立ち去った。
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