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□魔法鏡
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ーもう少しだけ この瞼にのってて
いつだってそう、映るのは1人だけー
俺の目は政宗しか見えてない。
政宗の声は聞こえるのに俺の声は聞こえてなくて。
ねぇ、どれだけ大きな声で話せばあんたにこの声が届くの?
でっかいアンプに繋いだらあんたのその鼓膜は震えてくれるの?
今日も鏡の中の俺は泣きそうな顔をして、
「泣きたいのに泣けぬなら笑えばいい」と。
そんな鏡の中の俺に思いっきり笑顔をつくって学校へ向かう。
なんだかとても歌いたいくらい泣けてきた。
はよ、って政宗が言う。
おはよ、って俺も返す。
好きだよ、って俺が言う。
俺も、って政宗が言う。
そんな風景が開店前のカフェのガラスに映った気がした。
もしかしてさ、あの時の鏡の
泣き出しそうな顔したあの俺は。