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□今日の終わりと売れない時計
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※学生佐助、バイト政宗
午後7時半をまわった。
まだ寒いこの時期、この時間帯はもう薄暗いを通り越し、真っ暗だ。
学校を終えて、自転車で夜道を走る。
今日はやけに冷たい風が身に沁みる。
帰り道に、小さいリサイクルショップがある。
俺は自転車に乗りながらちらりとウィンドーに目をやると、シルバーの歯車をイメージしてあるような時計が目に入った。
歯車の周りに同じ素材で、月と星の飾りが付いている。
オシャレではあるが結構地味めなその時計は、毎日俺の帰りの時刻を教えてくれる存在となった。
店内には入らず、ウィンドーから時刻を確認するだけ。
それだけで、あぁ、今日が終わったんだなと、俺の単純な頭は思えるらしい。
少し早めに帰れた日、いつも通りあの店で時刻を確認しようとウィンドーを見ると、あの時計の姿がなかった。
どういった感情かわからないが、思わず店内に入ってしまった。
「いらっしゃいませ」
黒髪の華奢な店員が、シャンデリアにハタキをかけている。
「…ちょっといいですか?」
「、はい」
「あそこのウィンドーに飾ってあった時計…あれって売れたんですか?」
別に買うつもりははなからないのだが、愛着というかなんというかで気になったので尋ねてみた。
「あー…アレは……俺が買いました。…もしかしてお買い求めでした?」
「あ、いえ、全然!…ただ良いデザインだなー…って、はは」
まぁ商品だし店員が買っても別にいいか。
それにしても、不思議な雰囲気の店員だ。右眼に眼帯をしていて、黒髪から覗く肌が真っ白で、凄く綺麗な顔立ち。
「俺も見てるうちに気にいったんだよなー…全然売れなかったし買っても問題ねーかなって」
「そうなんだ。俺もいつも外から見てたんだよね」
「へー……あー、俺があの時計を取っちまったお詫びに、帰り、店に寄ったらどうだ?…なんかアンタとは気が会いそうだ」
不思議な店員と不思議な時計、不思議なめぐり合わせで今日が終わった。
俺があの時計を前のように毎日見れるようになるのは、まだ先の話ー
今日の終わりと
売れない時計