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□うわっつら
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だれもいなくなったこの喫茶店。
頼んだブラックコーヒーはまだ出てきそうにない。
客が馴染みの俺だけだからか、マスターがいつもよりのんびりとカップを磨いている。
「今日は静かですね」
その言葉と同じように静かに笑うマスター
「そうですね、俺しかいませんし」
「まぁそれもありますけど」
コーヒーが俺の目の前に差し出される。
「今のアンタによく似た人が、昨日ここに来てアンタと同じものを注文しましたよ」
「はは、砂糖は多めだったでしょ」
「その通りです」
ジャズが流れるだけの店内にマスターと俺の2人。
この前までは違っていたのに。
「お客さん、寂しいですか」
「いや、そんな事ないよ。伊達ちゃんがいなくなっても、俺の生活になんら支障はないもんね」
「そうですか」
「そう…思おうとしてます」
苦いブラックコーヒーを飲み干し、喫茶店から出て扉をしめる。
マスターに見つからないように、うずくまって泣いた。
うわっつら
もう意味もない