main

□うわっつら
1ページ/2ページ


だれもいなくなったこの喫茶店。
頼んだブラックコーヒーはまだ出てきそうにない。
客が馴染みの俺だけだからか、マスターがいつもよりのんびりとカップを磨いている。


「今日は静かですね」

その言葉と同じように静かに笑うマスター

「そうですね、俺しかいませんし」

「まぁそれもありますけど」

コーヒーが俺の目の前に差し出される。

「今のアンタによく似た人が、昨日ここに来てアンタと同じものを注文しましたよ」

「はは、砂糖は多めだったでしょ」

「その通りです」


ジャズが流れるだけの店内にマスターと俺の2人。
この前までは違っていたのに。



「お客さん、寂しいですか」

「いや、そんな事ないよ。伊達ちゃんがいなくなっても、俺の生活になんら支障はないもんね」

「そうですか」

「そう…思おうとしてます」



苦いブラックコーヒーを飲み干し、喫茶店から出て扉をしめる。

マスターに見つからないように、うずくまって泣いた。











うわっつら
もう意味もない
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ