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□足跡
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今日は旦那とスイーツパラダイスという、食べ放題に行った。
俺が90分だけと時間が決められているのだと話したら、「なんと‼早く食べねば…‼」なんて、急いでケーキを頬張るから、ハムスターみたいで面白かった。
旦那と別れた後、偶然出会った鬼の旦那が釣りの成果を見せてきた。
随分と大きな魚を釣ったらしく、「きっとこれは海の主なんじゃねーか?はははっ!」と凄く嬉しそうで、こっちまで嬉しくなった。(ついでにアジの干物をくれた。)
家に帰ったら、何故かかすがと毛利さんがいて、なにやら真剣なガールズトーク(ではない)をしていた。
謙信様がどうとか、長曽我部がどうとか聞こえてきたので恋愛話なんだろうと考えたら、毛利さんが少し乙女にみえてちょっと笑えた。
夕方2人が帰った後、慶ちゃんが来た。
慶ちゃんは特に用事は無いのにフラリと家にやってくる。
就職活動したら?なんて言ってみたけど「俺はまだ縛られずに自由にいたいんだ」と返された。強制的に話題をナンパした彼女の話にされ、グダグダと話をした。彼と話している時間は案外好きだったりする。
ビールを呑んで酔っ払った慶ちゃんを送りとどけたら、時計の針はもう深夜1時を指していた。
そして今、俺はベッドにダイブして、1日を振り返っている。
皆の声、顔、出来事が頭ん中に様々な色で落書きされたような、そんな感覚。
その中、薄っすら付いた足跡がある。
いくらそれを消そうとしても消えなくて、いくら気にしないようにしても気になって。
誤って付着した青いペンキのような足跡。
足跡の正体は彼、政宗だ。
少し前まで付き合っていたが、俺から別れを切り出した。
納得するような理由なんてない。
ただ、どんどん彼に溺れていく自分が怖かった…それくらい。
「なんで、こうも消えてくんないかなぁ」
とくに未練なんてない、そう思っていたのに。
思ったよりその足跡は簡単には落ちてはくれないようだ。
開く携帯にもベッドにも文房具にもキーホルダーにも彼の足跡が付いてる。
「落ちてくれないのなら塗り潰してよ」
そう唱えて、今日も目を閉じる。
足跡
落とす術も塗り潰す術も知らない