*book*

□▽君に幸あれと、
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人は一番好きになった人を初恋の人と呼ぶのだろうか
それとも一番初めに好きになった人を初恋と呼ぶのだろうか
一人一人にそれぞれの初恋があってそんな甘くも苦い初恋を終えて、新しい恋へと物語を進むのだろうか。
私はそんなことを一人考えながら商店街を歩いていた。




今日は寒い日だった。12月ももう半ば。
クリスマスシーズンを前にした商店街はとても賑わっている。
街中に点灯されたイルミネーションはキラキラと輝いていて、まるで幸せそうな恋人たちの姿を映すかのよう。





「寒いなぁ....」






吐いた息が白い。思わず両手で口を覆った。
本当だったら私もあんな風に過ごしていたのに、と少しだけ悲しくなった。
そう。私は一年間ずっと片思いをしていた。
出会いは去年の冬。泣いている私に優しく声をかけてくれた君に私は一瞬で恋に落ちた。




君のことなんて意識してなかったよ、と私は笑った。
優しくて、でも「好き」なんて感情抱いていなかったのに
それなのに君を好きになってしまった。私の思いが大きくなるとは反対に君と私の距離は離れていってしまった。
一緒に並んで歩いた帰り道、笑って過ごしたあの公園
全てあの時と変わらないままなのに私と君の距離はこんなにも離れてしまったね。




「好きだよ。」たった一言を口にすることができなかった。






賑わう商店街。前を歩く恋人たちが今年の初雪を楽しそうに話している。
私はカバンの中に忍ばせたラッピング袋をぎゅっと握った。
「もうすぐ雪が降るらしいよ」「そうなんだ、今年は雪降るんだね」「楽しみだなぁ」そう言って笑う君の姿を見るのが嬉しくて一生懸命に編んだ手編みのマフラー
結局私は意気地なしで前に進む1歩を踏み出すのが怖かった。






もし、もしね。踏み出していたら君の隣に私はいたのだろうか。
舞い降りてくる雪はゆっくりと私の肩に落ちた。





『真綾は笑った顔が一番似合うな』

『ほんと!?嬉しいなぁ。でも奏多も笑った顔が一番似合ってる』

『ずっとこうやって笑っていたいな』





君との会話が脳裏を過った。



私は自然と君と一緒に歩いた公園に足を進めた。ほんのりと雪がブランコに積もっている。
君とここに座ったんだっけ。と私はまた笑った。
一緒にいたい。それは君にとっての一番になりたかった。
でも一番でなくても良いから君の隣にいさせて欲しいなんてことを考えてしまう自分が嫌になった。
せめて気持ちを伝えたかった。「好きだ。」「君が好きだ。」「諦めたくない。」なんてことが言えたらどんなに楽なんだろう。





そして「さようなら」と君に伝えることができたのなら。






伝えることができなかった言葉の数々
君に届けたかった想いの数々
それでも私にとって君を想って過ごした時間は素敵な時間だった。
私の物語の素敵な1ページになった。







「ありがとう。」私は小さく呟いた。
冷たい冬の風が頬を擦る。ああ、やっぱり今日は寒い。
けれども私の心は少しだけ軽くなっていた。
私が来たときより公園は白に包まれていた。
イルミネーションのようなキラキラはないけれど真っ白な雪が私の心を優しく包んでいく。





『           。』







私は口にすることのできなかった言葉を口に出した。
今年初めての雪とともに私の頬に一筋の涙が伝った。
来年の私は何をしているのだろう。君は笑っているのだろうか。
また誰かを好きになるのだろうか、
「やになっちゃうなぁ」なんて笑いながら空き缶を蹴った。
丸い弧を描くように宙に舞う空き缶。そんな空き缶を見ていると君と過ごした思い出の数々が頭を過る。
ああ、楽しかったな。と私は微笑んだ。








カツン、と音を立てて空き缶は地面に落ちた。
冷たい冬の風が公園中を吹き巡る。
「今日は初雪です。」そう言って私は両手で口を覆った。














**初めての恋が終わる時***
▽終わった恋に願うのならば、君に幸あれと。












▽あとがき***
今回は失恋ストーリーを書いてみました。冬って寒いよな!!!!!!!(涙声)
会話という会話はほとんどないまま、というより回想シーンでしかでてこないというあれです
女の子視点で物語が進んでいって最後まで女の子視点で終わる!!!!っていうのをやりたかったんだ(小声)

書いてるときに「初めての恋が終わる時」をひたすら聞いてました。笑
歌詞に沿って物語を展開してみたいなーと思ったのですが難しかったです(血涙)結局脳内妄想ストーリーになってしまいました.....((

でも気持ちはハッピーエンドで!!!

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