*book*

□▽甘い甘い二人の放課後
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「雷怖くないんだ。意外だね。」





誰もいない放課後の教室、彼の声だけが静かに響く。







「え、うん。だって雷って音だけでしょう。」







なんて可愛げのない返答なんだろう。と思いながらも私の口は相変わらず可愛げのない返答を口走る。そういえば今日は突然の雨だった。天気予報では晴れと言っていたのに、やっぱり予報は当てにならないわね。なんてことを一人考えていた。






「雷が怖いなんてさすがにそこまでガキじゃないですー」

「ふうん、意外。真綾って何でも怖がるイメージあったから」

「え、そうなの?私暗いとこいると落ち着く子だし部屋の隅っことか大好きだし、雷の音くらいなんてことないわよ」

「まあ、真綾らしいといえば真綾らしいけど。」

「真綾さんらしい?」

「うん。真綾らしいじゃん。ひねくれてるとことか、さ」





そう言って奏多は笑った。
正しくはにっこりと微笑んだ。という表現の仕方が正しい
奏多の声は聞き取りやすくていいなーと私は考えていた。まあでもひねくれているといえばひねくれているんだと思う。可愛げもないし、
でもそれを認めるのは私の性格だと癪なのだ。
なんとなく認めたくないのが私の性格なのであった。





「ひねくれてなんかないわよー 通常運営ですー」

「じゃあ、日頃から相当ひねくれてるわけか」

「るっせwwwそういう奏多こそ意外と怖かったりして。」

「なわけねーだろww真綾と一緒にすんなし」



何の変哲もない会話。だけれどもぽんぽんと、まるで淡々と降っている雨音のように二人の会話はリズミカルに進んでいく。
不意に、雷の音が教室に響いた。



「きゃー こわーい(棒)」

「もうすこし感情こめろよwww」

「全力ですーwwwwwww」






別にほんとに雷なんて怖くなんかなかった。もともと雷の音を聞いて一人盛り上がったりする性格の私である。こわーい。なんて言いながら人に抱きつく女子の気持ちなんて毛頭分かる気もないし、この状況で女子らしく彼に抱きつくなんて真似、私には到底不可能なのである。



ふと教室を見渡すと先程まで一緒にいた彼の姿が見当たらない。
え。なにえっと。一人で帰っちゃたの???いやまて別に一緒に帰りたかったわけではないがそこは待っててくれよ さっきまで話してたじゃん。
可愛げなかったのがいけなかったのだろうか
怒らせてしまったのだろうか。悶々と考えていてもきりがない。
私は小さく声を出した。




「......奏多?」

雨音だけが教室に響く。
私はさっきよりも少し強めに彼の名前を呼んだ。

「....奏多。」




どこに行ってしまったのだろう。窓の外を見るともうすっかり暗くなっている。
誰もいない教室、雨音だけが淡々と響く教室
不意に光った雷が不気味にカーテンを動かした。
ああ、窓開いていたのか。机が濡れてしまう。閉めないと
私は窓を閉めようとゆっくりと動いた


そんな私を招くようにカーテンが大きく揺れた
雨が強く吹き込んでいる。ああもう制服が濡れちゃう
窓に手を伸ばそうとしたその瞬間、ふわりと私は何かに包まれた

反射的に手をあげた





「......だれ!?やめて......。」

「.....ったく、ひどいなあ真綾は」

「....え!奏多?」

「俺に決まってるでしょww 俺以外に誰がいるんだよw」

「先帰ったのかと思った。」

「何言ってんの真綾www俺ずっとここにいたじゃん、ぼーっとしすぎなんじゃないのーww」

「........」

「真綾?」

「怒って帰っちゃったのかと思った....ばか」

「なんで、怒るわけないじゃん」

「いや、べつにそのなんていうんだ。いやえーっと。わ、わわたしが可愛げ何もないからその。いやほら可愛くねえなこいつ。とか怒ってるのかと」

「真綾ってそういうとこ面白いよね」

「面白くないです。」

「で、怖かったんだ?」

「なんでそうなるんですか。」

「いやさー、真綾俺の名前泣きそうになりながら呼んでたじゃんww」

「泣きそうになんかなってません」

「そうやってすぐ強がる」

「強がってなんかないで....」




不意に奪われる視界、それと同時刻、ゆっくりと塞がれる唇。
息ができない。視界も見えない。






「奏多...ンッッ....。」

「なあに、真綾」



意地悪く笑う彼の声、そんな彼の声もやはり聞き取りやすい。
静かな教室に響く彼の声




「奏多は意地悪ですよね。」

「真綾が強がりだからね」

「だから強がってなんか...」

「なあに?」

「なんでもないです。ばか。」




そう言う私の声もなんだか笑っているような気がした。
誰もいない放課後の教室、雨音だけが静かに響く。
そのリズミカルな音に合わせるように響く私たちの声

なんだか雨も悪くないな。天気予報が外れるのもたまには良いかもしれない。





「もう少しだけ、ここにいませんか」




そう私は小さく呟いた。









雨の日**Sweet Drops****
▽甘い甘い二人の放課後。









▽あとがき***
妄想全開になってしまいました...(血涙)雨の日ってなんだか憂鬱なんだけこんなほろ苦い青春があったら良いな!!!!!くそ!!!!!(発狂)という管理人の妄想でした。最後まで読んで下さってありがとうございます***

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