novel0.5

□#5 Lunch time
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『Lunch time』





オムレツ。サラダ、スープ。オレンジ。

グラタン。サラダ、スープ。リンゴ。

ロールケーキ。

ミルクティー。





此処に来てから、織姫の心を癒し始めたひとつの要因。

それは食事だった。


もとから食べることが至上の幸せと自覚する彼女にとって、
仲間の安全と平穏と、
自身の安全の次に危惧していたのが、「生命維持のための行為」つまり飲食。


虚は、魂を喰らう。

死神は、特に飲み食いせずとも簡単には死にはしない。


破面は、何を食べるのだろうか…


部屋に閉じ込められ、孤独を月光の下に募らせ、ひとしきり涙を流して、
彼女は空腹と共にそんな疑問を覚えたのだった。


得たいの知れない物体を食べるよう強いられたらどうしよう…

好き嫌いくらい、こんな状況なら我慢できると決意はしていたが、
いくらななんでも未知のモノを口にするとは…


新たな不安を抱えた織姫に用意された食事は、予想外なモノであった。


至って普通の、人間界でもよく見かけるメニューが、三食とも運ばれてきた。

専門的な知識はないが、見る限り栄養バランスも良くとれた…

しかも、美味しい。


杞憂は、発見の歓喜に変わった。



窓から外を見る。

澄んだ水色の空、
淡い黄色の、しかしハッキリと日光を放つ太陽。

それはまもなく、大空の中天にさしかかろうとしていた。



ソファーが柔らかい。

壁が、天井が白い。


鉄格子の影を見つめながら、織姫はまもなく運ばれてくるだろう昼食のメニューを、あれこれと考えていた。

そして、世話役の彼。

彼にも、「予想外の」要素があると発見していた。


「失礼いたします」

ノックと共にかけられる声。


織姫は、お待ちかねの昼食と、世話役の彼を出迎えるために立ち上がった。






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