星の少女

□8.金色の君と紅の少女
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地上に降りたミラに休みはない。
今度は日本からアメリカへユニオンの活動の監視の為に空を翔んでいた。

「ユニオンに行くのは久しぶりだね、ハロン」

「ヒサシブリ、ヒサシブリ」

以前今回と同じく監視目的でユニオンに向かったことがある。
その時は目の前でテロが発生したため、急遽武力介入に発展してしまった。
今回は何事もなければいいが…

「この見た目を利用した、現場での調査…」

アザゼルの中で新しく開いたモニターウィンドウには作戦内容が記されていた。
所謂潜入ミッション。
新型のフラッグカスタムのお披露目会があるので、会場に行き調査して欲しいとのこと。
難易度は極めて高い。

「新型の為にパーティまで開くなんて…」

ミラはぼやいた。
どうせガンダムに壊される運命だというのに、下手をすれば恥をかくために開いているようなものだ。
しかしミラにはどうでもいいことだ。
もしその機体が敵として現れても倒せばいいだけのことだから。

「…ポイント到達まで0045。ミラ・エスペランザ、作戦行動に入ります」

少しずつパーティ会場が見えてきた。
アザゼルは降下を始めた。








―――――――――――――――――――




会場は想像通りの賑わいだった。
フラッグカスタム―――正式にはオーバーフラッグスの機体のデモンストレーションが終わった後、会場の場所が移され立食パーティとなった。
ユニオン関係者の上層部が上機嫌にグラスを交わしている。

そんなことはどうでも良かった。
問題はデモでフラッグに乗っていたパイロットのことだ。

(やはりユニオン…あのテストパイロット、マイスターにも退けをとらない腕前だった。機体性能を最大限、いやそれ以上に引き出している)

今上司と思われる男と酒を酌み交わしている金髪の若い男。
彼が噂のフラッグファイターにしてユニオンのエース。

「…グラハム・エーカー」

端整な顔立ちのその人はミラに気付くと上司に会釈し、こちらに歩み寄ってきた。
ミラはさして驚くこともなくグラハムを真っ直ぐに見つめていた。

「少女、君もこのお披露目会に??」

軍人らしく凛々しくはあるが、話し方が独特でミラは首をかしげてしまった。
しかし直ぐに返答する。

「はい、新しいフラッグが気になって」

その言葉にグラハムはふむと頷くが、眉間には皺がよっていた。

「しかし君は此処に来るには少々幼すぎる。保護者はいないのかね」

ミラの目線に合わせたのかしゃがんで此方を真っ直ぐに見ている。
金糸の髪と翡翠の瞳が何とも美しい。
ミラの顔を反射するその瞳に曇りはない。
何時かこの眼にも翳りが落ちてしまうのだろうか。
CBによって―――



「アトリア、はぐれては駄目じゃないか」

後ろから落ち着いた男声がした。
振り向いた先にいたのは

「アレハンドロ様」

―――アレハンドロ・コーナー
今回のお披露目会に呼ばれた国連大使。
兼、CB監視官。
今回はミラが1人では不審がられることを想定して彼が保護者役に選ばれたのだ。
国連大使が保護者なら、ミラのような子供がパーティにいても不思議ではない。
グラハムは驚いて立ち上がった。

「貴方は国連大使のアレハンドロ・コーナー氏ではありませんか!!こちらの少女は貴方の…??」

「親戚だよ。アトリアは非常に賢くてね、MSにも詳しいから連れてきてみたんだ」

そう言いながらミラの頭に優しく手を置く。
グラハムは2人を見比べ、最後にミラの顔を見て微笑んだ。
ミラは上手く笑えないので丁寧にお辞儀をした。

「自己紹介が遅れました。アトリア・コーナーです」

言い慣れない名前だ。
本当の名前すら知らないのに偽名ばかりが増えていく。
同じく、虚しさも増えていった。




 
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