星の少女
□小休止 with A
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――――――プトレマイオス――――――
この日、ガンダム全機のシステムメンテナンスの為にマイスターは久々にゆっくりと休むことができる。
ミラはミッション以外であまり関わらないマイスターとの交流をハロンに勧められ、他のマイスターの部屋を訪れていた。
「ミラから来るなんて珍しいね」
この日はアレルヤ。
突然の訪問にも関わらず、優しく迎え入れてくれた。
「ミラ、ミンナトナカヨクナル」
「ハロンがずっとこの調子で」
ミラの頭の上でハロンが忙しなく耳を動かしている。
「ハロンはミラのこと、一番わかってくれているもんね」
アレルヤは苦笑いしながら紅茶を入れている。
鼻腔をくすぐる良い香りだ。
ミラは無意識にアレルヤの方に近寄っていった。
寄れば寄るほど良い香りがしてくるが、ミラの意識は紅茶よりもアレルヤの身体に向いていた。
しなやかな、実に見事な筋肉。
彼は穏やかな性格に反して体つきはマイスターの中でもしっかりしている。
「…………」ペタペタ
そんなアレルヤの背中にミラは思わず手を伸ばしていた。
見た目通り、硬さも弾力もある。
「ミラ??僕の背中に何か付いてたのかい??」
アレルヤは不思議そうにこちらを見てきた。
「…アレルヤの筋肉、凄いですね」ペタペタ
そんなミラの言葉にアレルヤは一瞬きょとんとしたが、直ぐにクスッと微笑した。
「そりゃ鍛えたからね。それに、君なら知っているだろうけど僕の身体は元々強化されているからね」
「…ごめんなさい」
「謝ることじゃないさ」
ミラは知っていた。
アレルヤが超兵機関で肉体強化されていることを。
その話に触れたことがアレルヤに対して失礼だと思ったが、彼は気にしないかのように優しくミラの頭を撫でた。
「身体が強いことは良いことだからね、病気もしないし」
そう言いながらアレルヤは紅茶をカップに注ぎ、備え付けのテーブルに運んだ。
どこから取り出したのか、クッキーの缶も置いてある。
2つの甘い香りが混ざって食欲がそそられる。
「ミラ、砂糖とミルクはどうする??」
アレルヤの手には砂糖入れとミルクの瓶。
「両方頂きます。砂糖は角砂糖なら2つ」
そう言うとアレルヤは慣れた手つきで紅茶に砂糖とミルクを入れ、かき混ぜた。
朱色の液体が白みを帯びていく様子をミラはまじまじと見つめていた。
「はい、出来たよ」
そう言って優しい色合いのミルクティーを差し出してくれた。
良い香りだ。
「ありがとうございます」
ミラは両手で大事そうに持ち、口元へ運んだ。
熱いかと思ったが、冷たいミルクのお陰で程よい温度になっていた。
「……美味しい」
目をキラキラ輝かせ、カップを覗き込んだ。
普段ほぼ無表情なミラの顔が、この時だけ年相応のそれになった。
「前に地上に降りたとき、美味しいお店で買った紅茶だからね。ミラ、クッキーもどうぞ。これも美味しいんだよ」
そう言ってアレルヤは嬉しそうに微笑みながらクッキーの缶をこちらに寄せた。
中に詰められたクッキーはどれも美味しそうで、どれを食べようか迷ってしまう。
「これ……貰います」
ミラは可愛らしいチェッカー柄のクッキーを手に取った。
小さなクッキーを小さな口に放り込み、モグモグと租借する。
「……!!」
ミラの目は今まで見たことがないくらい純粋に喜んでいた。
余程このクッキーを気に入ったのだろう、次々と手を伸ばしては栗鼠のように頬張った。
「喉に詰まっちゃうよ」
アレルヤが困った様に笑い、紅茶を薦めた。
ミラも流石に口に入れすぎたのでゆっくりミルクティーを流し入れた。
至福の時。
ミラは戦い疲れた身体を存分に休めることができた。
初めて食べるクッキーも、何百年振りに飲んだであろう紅茶も、彼女を虜にしてしまった。
「アレルヤ、ありがとうございます」
ミラは飲み干したティーカップを食堂へ運びながら、一緒に食堂に向かうアレルヤに謝辞を述べる。
「どういたしまして。喜んでもらえて僕も嬉しいよ」
年に似合わないほど大人びてしまったミラに、子供に戻る機会を与えられた気がした。
アレルヤは、それがいつも自分達マイスターをまとめてくれるミラへの、自分なりの恩返しに思えた。
「アレルヤ、1つお願いしてもいいですか……??」
そう言うミラの顔が少し赤い。
「いいけど、なんだい??」
アレルヤが訊ねると、ミラは小さく言った。
「……また、紅茶とクッキーをご馳走してくれると……嬉しいです」
恥ずかしいのか耳まで真っ赤だ。
アレルヤはそんなミラが愛しくて、優しく頭を撫でながらもちろん、と返事をした。
「今度はケーキとか用意しとくよ」
2人だけの、秘密の約束。
―――小休止 with A fin.
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後書き:
ちょっとした箸休め的な話。
殺伐としたミラの子供らしい面が出せたと思います。
果たして、この約束を果たす日は来るのでしょうか。
他のマイスターとの絡みはまたいつか!!