星の少女

□5.声無き会話
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アレルヤは自室に備え付けられたベッドに腰を掛け、頭を押さえて項垂れていた。

「うっ…またこの痛み……どうして……」

定期的にアレルヤを襲う頭痛。
以前同じような症状によって意識が途切れ「もう一人の自分」が目を覚ました。
しかし、この痛みによって「彼」と入れ替わったことは一度もない。
そしていつも数分〜十数分経つとピタリと止む。
モレノに診てもらったこともあるが、結局原因はわからなかった。

「ハレルヤ……君のせいなのかい?」

アレルヤは内なる自分に問う。しかし答えは返ってこない。
無視しているのか聞いていないのかはわからないが、答えを待つだけ無駄そうだ。
狂気の色をした金の瞳。
それを隠すように伸ばした前髪に指を沈めて、アレルヤは頭痛が治まるのを待った。
せっかく次のミッションまで休みがとれたのだから、ゆっくりしていたい。

「憂鬱だよ、本当」

アレルヤは溜め息をついて視線を落とし、無機質な床を睨み付けるように見つめた。









「……貴方はその人革連の超人機関で、アレルヤに施された脳量子波処置手術で生まれたのですね」

仄昏い部屋の中、ミラは椅子に深く座り、目を閉じたまま誰かに話しかけるように頭の中で呟く。
部屋にはミラとハロンしかいない。
しかしハロンはベッドの上で転がっているだけ。
ミラの意識は今、ある人物と繋がっていた。

―だが、どうやって脳量子波を施したかまでは知らねぇぞ。
―とても誉めらたやり方じゃなさそうだけどな。

ミラの脳に直接声が響く。
アレルヤによく似た、しかし彼よりも攻撃的な声色。

「そうですか…情報提供ありがとう、ハレルヤ」

ハレルヤ。
今、アレルヤの中で意識体として存在する彼と彼女の意識は脳量子波によって繋がっている。
言葉の無い会話。
直接会わずとも、自分のイメージがそのまま相手に伝わる。
何故私にはこんなことができる?
思い出せない。
いつか思い出せるだろうか。

「こちらの方でも調べておきます。アレルヤには…何も言わない方が良いでしょう」

―わかった。

「ではまた超兵について、色々と教えてください」

―気が向いたらな。あばよ…『超兵ならざる何者か』さんよ。

ハレルヤの脳量子波が遮断された。
アレルヤ意識の奥に帰ったのだろう。

「超兵…脳量子波…でも、私は超兵ですらない…」

ミラは彼との会話の中で、自分の存在がいかに謎なものかを再認識してしまった。
同じ脳量子波を使えても、私はアレルヤ、ハレルヤとは違う。
ではこの力は一体……

「あぁ…イオリア様…」

私とは何なのでしょうか。





 
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