星の少女
□4.狙撃手の受難
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ロックオンは頭を抱えていた。
場所は展望室。
防弾ガラスから広大な宇宙を一瞥できる部屋。
そこに揺蕩う人影。
「…なんでここで寝るんだよ……ミラ」
逆さまになった状態で、ミラは眠っていた。
チューリップの中で眠る親指姫よろしく長い髪に包まれたCBの女神は、なんとも気持ち良さそうに寝息をたてていた。
しかしここは展望室。
決して寝室ではない。
「ハロン…はいないんだったな」
現在、ハロンはアザゼルのメンテナンスのためにイアンが格納庫に運び込んでいる。
それはいいのだが、なぜミラはここで眠ってしまったのだろうか。
それが理解できない。
とりあえずここに放っておくわけにはいかない。
「まったく…手のかかるお姫様だなぁ?」
そっと起こさないように抱き抱え、ミラの部屋へと運ぶ。
ふわふわと柔らかな髪がロックオンの頬をくすぐる。
その度にくしゃみしそうになるのを堪えて、廊下を進んでいく。
「ロックオン!!ミラったらまた変な所で寝てたんでしょ?」
途中クリスティナとすれ違った。
腕の中のミラを見て同情の眼差しを向けてくる。
俺ももはや苦笑いするしかなかった。
「どこでも寝ちまうよな、こいつ。まぁこれでもガンダムマイスター最強だからな。丁重にもてなさなきゃティエリアに何言われるかわかんねぇしさ」
数秒の沈黙の後、2人同時に笑い出す。
勿論、ミラが起きないように小声で。
「じゃあ、起こさないように気を付けてね」
「おう」
クリスティナはそのままブリッジへと向かい、俺は再び廊下を行く。
幼い戦士を部屋にエスコートするために。