星の少女
□10.過去を殺すために
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人革連の対ガンダム部隊『頂武』との戦いを終えたその日。
張りつめた緊張がブリッジを包んでいた。
「これは全て貴女のミスが原因だ、スメラギ・李・ノリエガ」
冷たい言葉が放たれる。
ティエリアは苛立つように、艦長席に座るスメラギを睨み付けた。
周りで作業にかかっているクルーも自分の仕事に集中しきれず、そのやり取りに耳をそばだてていた。
「今回の人革連による軍事作戦…キュリオスを鹵獲寸前まで追い込まれ、ナドレの姿を敵に露呈し、ミラを不安定な状態に陥らせてしまった。全ては作戦の指揮者である貴女の責任です」
「ごめんね…」
スメラギは申し訳なさそうに頭を垂れた。
彼女からティエリアの表情は伺えないが、氷柱のような眼差しが背中に刺さるのがわかる。
本当に申し訳ないことをした。
心からそう思っていた。
「でも私も人間なの。時には失敗することもありわ」
その言葉にティエリアの視線が強さを増す。
「そんな問題では済まされない。計画にどれだけ支障が出たと…」
「もういいだろ」
壁に寄りかかり、腕を組んでいたロックオンが口を開いた。
「ナドレを敵に晒したのはお前だ、ティエリア」
ティエリアの鋭い視線はロックオンに向けられた。
「………そうしなければやられていた」
「だとしても、お前にも責任はある。あんまミス・スメラギばっか責めんなよ」
そう言うとロックオンは表情を少し緩めて言った。
「命があっただけめっけもんだ。そう考えろよ」
しかしティエリアは口を横一線に固く結び、不満に歪んだ表情のままだ。
「………今後はヴェーダとミラからの作戦指示を優先する。失礼」
そう言い放つとブリッジを後にした。
クルーたちは重苦しい空気から解放され、ティエリアの愚痴を溢していた。
「かわいいよな、生真面目で。……八つ当たりなんかしちゃってさ」
ドアの向こうに消えたティエリアを見つめたまま、ロックオンは彼の不器用さに苦笑いした。
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ティエリアはミラの部屋の前で立ち止まっていた。
あれから一度も姿を見ていない。
恐らく彼女もアザゼルの『アレ』を使ってしまったのだろう。
そう思うと苦しかった。
ティエリアの崇拝する彼女を守れなかった自分に苛立った。
「………」
そのまま暫く、ティエリアは動けなかった。
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光を完全に遮断した部屋にミラはいた。
漸く失望の淵から立ち上がれた。
そして、思考している。
今回の人革連の作戦のように、今後も敵勢力からの攻撃があり得るだろう。
そうなった時、必要となるもの。
それは『順応性』と『連帯感』だ。
これらが欠けていたから失態を晒したのだ。
(マイスター同士の協力が必要となる…)
今のマイスターには協調性が見られない。
ミラに対しては全員友好的だが、刹那は単独行動が目立ち、ティエリアはまるで他者を見下しているかのようだ。
こんなことでは駄目だ。
(………どうすれば…)
『絆』が生まれるのだろう。