奏音―カノン―

□奏音―カノン― G
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穏やかさを装った空気は


危ういバランスで儚いタマゴを守るように


心の奥をひた隠す














「昨夜はごめん・・・俺、飲み過ぎて全然覚えてなくて・・・」


「あ、え、うん。僕も、結構飲んじゃってたみたいで・・・気付いたら公園に帰って来てた」






嘘から嘘への危うい綱渡り



確かめる術もないまま、色々なものを置き去りにして新たな嘘を生んでいく



心に燻る消えない熱は、均衡を破らないために二人に薄く脆い仮面を被せた







祝杯をあげたあの夜から、表面上は変わったことは特にない。


それまでと変わらず、朝食を一緒に食べ、夜は時間とタイミングが合えば少し会話をしておやすみを言う。


変わらない生活を続けながら、お互いに心を閉じ込め距離をとった。



薄くて脆い仮面が割れてしまわないように―――・・・











『もう逢えることはないんだ』

そう笑ったソンミンが浮かぶ。


なのに未だににあんな顔をするということは、きっと心の何処かで待ち続けているのだろう


これまでも特別近しいわけではなかったけれど、本能なのか意識しているのか、ソンミンは自分を近付けないための壁を作っている



背を向けるのではなく、こちらを見ながら壁を作るから

キュヒョンは何も出来ずに佇むしかない。




ソンミンの“大切な人”の存在の大きさを、キュヒョンは胸の痛みと共に感じていた。














ふとした瞬間に

肌を這うキュヒョンの舌と唇の感触が甦り、ソンミンの心と身体を小さく震わせた。



キュヒョンはいずれ帰る

韓国へ


元恋人の元へ



この場所から、自分から居なくなる



これ以上近付きたくない




ソンミンは不安定な心が動き出してしまわないように

自分を戒めるため、何度も空を仰ぎ深呼吸を繰り返した。











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