奏音―カノン―

□奏音―カノン― D
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もう4日目になる。


「おはよう」


その声にソンミンが手を止め振り返ると、キュヒョンが袋を抱えて立っていた。


あのレストランで会った次の日の朝、キュヒョンは突然現れ

「朝メシ、食おうよ」

と言った。




何故、自分の世界へ存分に入り込み、思うままに筆を滑らせる作業を中断してこの男と食事をしなければならないのか

何故、景色が特に美しいこの時間を、この男との時間に割かなければならないのか

何より何故、毎日この男が自分のもとへと通うのか



苛立ちを露にし、ソンミンは忌々しくキュヒョンを睨み付けた。




「はい、これ」

笑顔でキュヒョンがカップを差し出す。




「だからキュヒョンさん、僕、苦いのも熱いのも苦手って、」


「今日はカフェ・クレムにしたから。これなら平気でしょ?少しその辺に置いとけばすぐ冷めるって」




毎日持って来るエスプレッソを、いらないと言えば『なんで?どうして?』としつこく聞いて来るキュヒョンに、苦いから、熱いから、と言って断って来たソンミンには、もう断る理由が見当たらない。





これだけあからさまに断っていれば、いい加減察して諦めそうなものだが、キュヒョンの一向に懲りない様子にソンミンは言葉を失ってしまう。




「ほら、食べよう。いらないなら捨てるだけだよ?」






これは最早、脅しだ

捨てると言えば自分が断れないことを知っていて、わざとそういう言い方をしてくる

ここに来た初日、『いらない』と言った自分の目の前で、この男は信じられないことに本当にゴミ箱へ放り込んで立ち去った

それきり来ないものと思えば次の日の朝、全く同じように現れたのだ


次の日も、その次の日も、そして今日も









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