◆a la carte◆
□鳴かないホトトギス
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「.....は?今、なんと申されました?」
明智はいつも冷静な表情を僅かに歪めた。
「だーかーらー。あらかるとの全員を安土城に呼べ、って」
この方の思考に驚かされるのはいつもの事だが、此度はまた.....
「あの...あらかるとの方々は、その...信長さんや蘭丸くんの中の人とは同年代ですが...それぞれ国も時代も違えば...あの...その....難しいかと.....」
「なんだよ!中の人って!言うな言うな!だいたい、それをどうにかするのがおまえの仕事だ。明智、麒麟呼べるくらい知将なんだろ?」
あぁ、そのニヤリと笑うお顔が嫌だ、と明智は思う。
「だーいじょうぶだって。そんなの関係無くなんとなくどうにでも出来るのが、こういう作り話の良いところじゃないか。あとは明智、頑張れ!」
かつてあの番組で『半兵衛!ナイス判断!』と見せた爽やかな笑顔と同じ、親指を立てて笑うこの方は本物の魔王に違いない。
※※※※※※
「日本のお城ってすげーな!!」
昔、世界史の授業で少しだけ勉強したことのある武将が住まう城″という巨大な安土城。
恐る恐る近付くメンバーを余所に、ヒョクチェはその瞳を輝かせた。
「おっ!エレベーターがある!さっき防犯センサーもあったし、お城って結構ハイテクなんだな」
ヒョクチェの様子につられるようにヒチョルの好奇心は刺激され、我先とエレベーターへ乗り込む。
「あん、ひちょりひょん。待ってぇ。きゅひょな、行こ!」
「あ、うん」
ポーンという優しい音と共に開いた扉の前には、松竹、鳳凰、花鳥風月などが描かれた絢爛豪華な襖、襖、襖。
「うわ....すごっ....」
あまりの迫力と煌びやかさに、一行は立ち竦んだ。
「遠路遥々お越し頂きましてありがとうございます。私は明智光秀と申します。ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ。信長さんがお待ちです」
「ん?んー???あけちみつひで、っておだのぶなが殺した人じゃね?」
意外にも日本史を知っていたドンへが首を傾げる。
「わ!ばか!しーーーっ!!」
慌ててドンへの口を押さえるヒョクチェに、明智は小さく笑った。
「いえ、いいんですよ。本当の事です。もう400年以上昔の話ですが...。私はそちらの国でも世紀の裏切り者なんでしょうね。ですが何の因果か現世に生まれ変わり、今またこうしてお仕えしています」
「や、いや、そんな、ことは...なんか、すみません」
「えー、でも信長って人すっごい勝手なんでしょ?もう1回殺したくならないの?」
また聞きにくい事をかくもあっさりと、そして信長さんもあなたには勝手だと言われたくないだろう、とキュヒョンは思う。
「勝手...そうですね。横暴ですしね。でも家臣が死ねば誰より大声で泣くし、身分関係なく気さくに話しかけるし、人間味溢れるお方なんですよ。それに今はだいぶ色ボ...」
「イロボ?」
「あ、いえ、なんでもありません。さぁ、どうぞこちらです。信長さん、明智です」
襖の前で声を掛けると、中から
「へーい、どーぞー」
と、随分と間延びした声が返って来た。
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