parallel

□空と海と、嫁な君とA
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「ずっと・・・生まれてからずっと、花嫁修業して来ました」


そう言われて、言葉に詰まった。




俺のために生きて来た

と言われたのと同じだから。





何なんだ、それは

そんな人身御供の如く差し出されても



時代錯誤もいいところだし、理不尽極まりない

何の疑問も抱かずここまで来たなんて、正直おかしい

変過ぎる





「だからね、さっきから何回も言ってるけど、そんなこと言われたって・・」


「・・帰るところが・・・無いんです」


「帰るところが無いって・・・じゃあどっから来たの。出て来たところに戻ってくださいって話でしょ」


「もう、無いんです・・・祖母が・・先日亡くなったので・・家も処分しました」


「・・・・・」






家を処分・・・

亡くなったって―




マジかよ




ここで追い出したら完全に俺、悪者じゃないか


わざわざこんな離島まで、祖母同士の勝手な約束で知らない男のところに嫁≠ノ来た

今まで俺のために生きて来た、男


身寄りも無ければ、行く宛も無い



でも、だからと言ってこんなこと到底受け入れられない




考えろ

考えろ、俺





「あの・・・なんで俺たちが結婚・・・あなたが俺のところに来ることになったのか、理由を聞いてもいいですか?」


「理由・・・」



何の曇りもない、真っ直ぐに俺を見る黒い瞳がやけに居心地が悪い。





「ずっと花嫁修業・・っていうんですか?して来たって言ってたけど、あなたもおかしいと思ったでしょ。自分も男なのになんで、って」



ソンミンさんは両手でマグカップを持ったまま、視線を落とし黙っている。





「ソンミンさん?」



小さく息を吐き出しカップに口をつけると、小ぶりな喉仏がくん、と上下した。





「・・・お前はキュヒョンのために生まれて、キュヒョンのために生きていくんだって、5歳の誕生日に言われました」



その顔は昔を懐かしむように、わずかに微笑みを蓄える。



「別に・・・変だとか不思議には思わなかったです。母親代わりに僕を育ててくれた祖母の言うことだから、きっとそういうものなんだろうって」



生まれたての雛鳥かよ

どれだけ素直に刷り込まれたんだ





「一度もおかしいと思うことは無かったの?」


「・・・一度だけ、聞いたことがあります。もしかしたら僕は性別を・・間違えて生まれてしまった気がして・・男同士なのに、どうして?って」


「・・・で?」


「運命だから、って」








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