parallel

□fake@
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よりにもよってというべきか

厄介な嘘をついた、と我ながら思う。







中の様子が全く分からない、建物の重たい磨りガラスのドアを開けた。



立ちこめる煙草の煙りと酒の匂い、様々な香水が混ざりあったなんとも言えない匂いと雰囲気に顔をしかめ、それでも中へ踏み入れる。





ここまで来たはいいけれど、どうやって相手≠探したら良いものか―







さすがに奥まで進む勇気はなく、出入口に程近いカウンター席に腰を掛けた。






「アドニスを」


バーテンダーに告げ、周りを眺めてみる。






店内は薄暗く、換気も悪いせいで客の顔まではよく見えない。







でも―こんな場所に何度も来るのはごめんだ


慎重に選ぶべきなのは分かっているけれど、とっとと決めてしまいたい











「アドニスでございます」


コトン、とコースターの上にグラスが置かれ視線を戻そうとした時

同じカウンターに座る男と目が合った。





―この人だ






自分の中の何かが脳に訴えている。




その男から目が離せないでいると、男の背後から体格の良い別の男が抱き締めるようにして耳元に口づけた。



何かを囁いているのだろう


クスクス、とカウンターの男のものらしい笑い声が聞こえる。







「ふふ、いいけど幾ら出す?」


まだどこか幼さすら残る顔で男は目を細め、体格の良い男はもう一度耳元で囁いた。






「それじゃダメ。もっと出せるようになったらね」



ミルクティみたいな髪の色をしたカウンターの男は、笑いながら肩に乗った大男の手を払いのける。

大男は特に怒る様子もなく、男の頬にキスをして立ち去って行った。












まるで売春だ






驚いたまま男を見ていると、再び目が合う。


クスリ、と笑い

男は甘ったるそうな色をしたカクテルに口を付けた。







「ねぇ、これシナモン入れたでしょ。苦手だから抜いてって言ったのに」


「あぁ、ごめん、ソンミナ。今、取り替えてあげるから」




ソンミン≠ニいうらしい男はきっと常連なのだろう。


バーテンダーは手際よく赤ワインや果物を捌き、ソンミンの前のグラスを置き換えた。










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