珈琲屋 ヒニム

□#1
1ページ/3ページ






「キュヒョナ、お前どうする?」


「んー。俺、パス」



レポートを書くのになんとなく図書館に行くって気分でもなく、友達の誘いを断って街を歩いていた。





――こんなところにカフェなんてあったっけ?





丸太小屋に蔦を絡ませたような造りの建物

明るい光が射し込むテラスには、夕方や夜でも楽しめるようにセンスの良いランプが各テーブルの中央に置かれている。



近代的な造りとは違う、木のぬくもりを感じることが出来そうな、どこか懐かしくて落ち着けそうな


だけど、こういう所ってアタリハズレが大きいんだよなぁ



そんなことを考えながら、思いきってやけに重厚感のある木のドアを開けた。






カランカラン


少し低めの心地好い音を、ドアベルが奏でる。



明るい店内、テーブル席が10席ちょっとはあるだろうか

木で出来ているカウンターにも椅子が5脚ほど


うん、悪くない








「いらっしゃいませー」


日曜日の午後3時

店内はやたら若い女性たちと、何故か男性たち、半々くらいで賑わっていた。





「ごめんなさい。お休みの日のこの時間は混んでて・・・カウンターでも良いですか?」


「はぁ・・・」




きっとここは人気のカフェなんだろう

カフェっていうか、以前日本で入ったことのある喫茶店って雰囲気


こんなに混んでちゃ、落ち着いてレポートなんて書けないな






溜め息とも返事ともつかない声を漏らし、でもここまで入っておいて帰るわけにも行かず

その声に促されるままにカウンター席へと座った。







「こちら今日のスイーツのメニューです。良かったらどうぞ。美味しいですよ」



差し出されたメニューを持つ、シャツの袖で半分隠れた手の先を辿って目線を上げると、ニッコリと微笑む・・・・・・




――男・・・だよな?









前髪が少し長めの黒髪に、ツンとした鼻先、ふっくらとした頬

清潔感のある白いシャツの襟元には、シフォン素材の大ぶりなリボンが結んである。





あれ?

なんか・・・か・・・・可愛い・・・?








産まれて初めて男を可愛いと思った自分に愕然としながらも、目を離すことが出来なかった。









「あの・・・僕の顔、なんか付いてます?」



困ったように笑いながら小首を傾げる。


このあざといまでの仕草が、余計にその可愛らしさを演出していた。





「いや、え・・と、アイスキャラメルマキアートをひとつ・・・」















「で?スイーツどうすんの?食わねーの?」








.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ