珈琲屋 ヒニム
□#1
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「キュヒョナ、お前どうする?」
「んー。俺、パス」
レポートを書くのになんとなく図書館に行くって気分でもなく、友達の誘いを断って街を歩いていた。
――こんなところにカフェなんてあったっけ?
丸太小屋に蔦を絡ませたような造りの建物
明るい光が射し込むテラスには、夕方や夜でも楽しめるようにセンスの良いランプが各テーブルの中央に置かれている。
近代的な造りとは違う、木のぬくもりを感じることが出来そうな、どこか懐かしくて落ち着けそうな
だけど、こういう所ってアタリハズレが大きいんだよなぁ
そんなことを考えながら、思いきってやけに重厚感のある木のドアを開けた。
カランカラン
少し低めの心地好い音を、ドアベルが奏でる。
明るい店内、テーブル席が10席ちょっとはあるだろうか
木で出来ているカウンターにも椅子が5脚ほど
うん、悪くない
「いらっしゃいませー」
日曜日の午後3時
店内はやたら若い女性たちと、何故か男性たち、半々くらいで賑わっていた。
「ごめんなさい。お休みの日のこの時間は混んでて・・・カウンターでも良いですか?」
「はぁ・・・」
きっとここは人気のカフェなんだろう
カフェっていうか、以前日本で入ったことのある喫茶店って雰囲気
こんなに混んでちゃ、落ち着いてレポートなんて書けないな
溜め息とも返事ともつかない声を漏らし、でもここまで入っておいて帰るわけにも行かず
その声に促されるままにカウンター席へと座った。
「こちら今日のスイーツのメニューです。良かったらどうぞ。美味しいですよ」
差し出されたメニューを持つ、シャツの袖で半分隠れた手の先を辿って目線を上げると、ニッコリと微笑む・・・・・・
――男・・・だよな?
前髪が少し長めの黒髪に、ツンとした鼻先、ふっくらとした頬
清潔感のある白いシャツの襟元には、シフォン素材の大ぶりなリボンが結んである。
あれ?
なんか・・・か・・・・可愛い・・・?
産まれて初めて男を可愛いと思った自分に愕然としながらも、目を離すことが出来なかった。
「あの・・・僕の顔、なんか付いてます?」
困ったように笑いながら小首を傾げる。
このあざといまでの仕草が、余計にその可愛らしさを演出していた。
「いや、え・・と、アイスキャラメルマキアートをひとつ・・・」
「で?スイーツどうすんの?食わねーの?」
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