珈琲屋 ヒニム

□#5
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「そのリボン、凄く・・似合ってます」



やっぱり目線は合わせてくれないな





「ふふ、そうですか?でも僕も本当は、ヒチョリヒョンやドンへみたいな黒い細身のネクタイをしたいんです」


「ネクタイ・・・」


「そう、ネクタイ。なのにヒチョリヒョンが『お前はコレにしろ』って強引に。いくら色が黒でも、こんなふわふわなリボンじゃ女の子みたいでしょ?」


「でも可愛いです、よね」


「それ!僕も男だから可愛いじゃなくて、カッコいいって言われたいのに!ヒチョリヒョンが勝手だから!そりゃあの二人には全然敵わないけど・・・でも、」





キュヒョンさんをチラリと見上げると、相変わらず少し俯き加減で

でもなんか、すごく優しい表情をしていて







「・・・ごめんなさい、僕、喋り過ぎですね」


「あ、いえ・・」


「しかも愚痴ばっかりで」



こんなんじゃダメダメ

なんだか話しやすくて、つい色々喋っちゃったけど

お客様に愚痴なんて失礼だ


しっかりしなくちゃ














「ソンミンさんは・・・」


あ、

やっと目線が合った






「店長のことが・・好きなんですよね」


唐突な質問に、びっくりして目が丸くなってしまう。




これはヤバい、そう思った時にはもう遅くて

あっという間に赤く熱くなる僕の顔



その様子に、キュヒョンさんも少しだけ目を丸くした後

何故だかちょっとだけ寂しそうに笑って


「・・・ですよね」


と、小さく呟いた。
















「・・・僕の、片想いなんです・・」


そう

叶うことはないと分かっているのに、それでも大好きで

ヒョンには運命の人がいることも分かっているのに、それでも離れたくなくて

こうやって毎日一緒に居られるだけで

それだけで嬉しくて













「俺と・・・同じですね」


「え?」








初めて見るキュヒョンさんの真っ直ぐな瞳









・・・もしかして―――・・?




ヒチョリヒョンにからかわれても

ドンへと小競り合いみたいなことをしても

通って来てくれるキュヒョンさん



たくさんの失礼に、気分悪そうに帰ることだってあるのに

なのに必ずまた来てくれて






素敵な人、だと思う


背も高いし、顔も格好良いし


今日知ったばかりだけど、優しいところがたくさんあって





―ヒチョリヒョンの悪い冗談・・・だよね?















「お店、混んでそうですね。ソンミンさん、濡れなかったですか?大丈夫?」


「・・・・はい」










気付けはお店の前


バス停からの2ブロック


通い慣れたこの短い距離に

こんなにも物語が詰まっているなんて



僕は初めて知った。









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