珈琲屋 ヒニム
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なっ!!
俺、何にも言ってないぞ!
しかもさらっと生意気とか!!
ヒニムを睨むと、しれっと飾られた花束をイジっていた。
それだってさっき見かねたソンミンさんが飾ったのに!
「ほんと、何でもないです。なんか・・返ってすいません」
「そう?なんかあったら言ってね?俺、隣で“Angel's dimple”って花屋やってるから」
「はぁ・・・ありがとう、ございます」
なるほど
花屋の名前はきっとこの人からつけられたものなんだろうってくらいのエクボが出来る優しい笑顔を向けられ
なんだかいたたまれなくて俺は帰ろうと席を立った。
ソンミンさん・・・今度はもう少し、落ち着いてる時に来ます・・・
「あ、君。名前は?」
「・・・チョ・キュヒョンです。そこの大学生です」
「キュヒョンくんか。俺、ヒチョルの同級生のジョンス。コイツ、口も悪いし態度も悪いし性格も悪いけど、人は悪くないんだ。良かったらまた来てやって。ね?」
ヒニムの肩を揉むように手を置いたジョンスさんからもう一度笑顔を向けられ、俺は深く頭を下げた。
「うん。本当良かったらまたお願いします。味は確かだから」
ギリシャ彫刻も、映画の1シーンみたいに右手をあげて微笑んでいる。
カウンターの中にはふんわりと立つソンミンさん。
ここはアレか
なんかちょっとした楽園か何かか
キレイな人たちばっかりで、現実離れもいいトコだけど
優しくて笑顔の溢れる人たちがいっぱいで
――うん、いい店だな
「コイツさ。ソンミナに惚れてんだぜ」
?!?!?!?!
「えー、そうなの?ヒチョルじゃなく?」
ちょっ、
「ヒチョリヒョン!!」
いや、
「そうか。ソンミニヒョンを。俺のライバルにならなくて良かったけど、ヒチョリヒョンをライバルにするとは」
おい待て!!
あまりの驚きと怒りと恥ずかしさと
それらが一気に押し寄せた俺は、まるで瀕死の金魚みたいに口をパクパクさせるしか出来なくて
――撤回だ
いい店宣言、全力で撤回だ
「コイツは俺にベタ惚れだからな。
ま、頑張れよ」
赤くなるソンミンさんの肩を抱き寄せながら、勝ち誇ったようにヒニムは笑った。
財布の中にある紙幣全部をカウンターに叩きつけて、店を飛び出す。
「キュヒョナー、頑張れよー!負けるなよー!」
後ろからジョンスさんや彫刻の声が聞こえた。
どこがいい店だ
変な店!
変な店!!
変な店!!!!!!
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